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コロナ禍における学びの保障に向けた取り組み~休校時の子どもの居場所、運動機会の提供も~

15面記事

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1人1台端末持ち帰りによるオンライン学習
 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた学校の臨時休業では、各学校・地域においてさまざまな取り組みが進められた。中でも学びの保障として最も大きかったのが、1人1台端末を家庭に持ち帰るなどして進められたオンライン学習だ。ドリルなどの学習教材を配信する、グループウェアを活用してコミュニケーションをとることや課題に取り組むほか、教員や教育委員会が作成し授業を配信したり、個々の課題の進捗を確認するオンライン面談を実施したりする学校もあった。しかも、毎朝子どもが健康状況を報告することによって、健康観察の手段としても大いに機能した。
 また、子どもに対する学びの場の提供としては、文科省や教科書協会などが自宅で活用できる教材や動画のリンクを紹介したサイト、科学技術広報研究会は科学技術の面白デジタルコンテンツを公開した。ほかにも、休校中の子どもの自由研究をつくば市の研究者や司書等がサポート(茨城県つくば市)、テーマごとに本を袋詰めして貸出(秋田県鹿角市)といった取り組みもあった。
 さらに学習の遅れへの対応としては、次年度への指導状況の引き継ぎフローを作る。卒業を迎える学年の子どもについては、進学先の学校に入学する子どもの情報が引き継がれ、補充指導を行ったケースもある。

子どもの居場所を提供する
 保護者の就労により自宅で過ごすことが困難な子どもへの居場所確保では、小学校低学年や特別支援学級の子どもを学校で受け入れ、放課後児童クラブに引き継ぐ試みが多く行われた。そのほか、東京都港区では小学校施設(図書室、校庭、体育館等)を活用した「緊急児童居場所づくり事業」を実施。岡山県浅口市は閉館した図書館を子どもの居場所として活用。愛知県名古屋市は、自宅で保護者が見守ることができない子どもについて14時まで学校で受け入れ、それ以降も学校施設において居場所を確保した。学校休業中はより一層、学校と家庭・地域との連携が重要となるため、PTA委員会をオンラインで開催した学校もあった。
 また、休業中の子どもの健康状態の把握としては、養護教諭が学校と学童のコーディネーター役になって経過観察をした事例。大阪府泉南市教育委員会では家庭訪問の際に、体調や学習状況とともに、食事を問題なく取っているかを確認した。目黒区立五本木小学校は栄養教諭が中心となり、小学生でも簡単に家庭で作れる料理レシピを発信し、この機会に「生活を学ぶ」ことを家庭に呼び掛けた。
 給食の提供・食材の活用としては、学校預かり時に希望者に昼食を提供した学校が多かった。食事をするときは手洗いの徹底に加え、換気やできる限り距離を空けて着席するなどの工夫が施された。あるいは給食センターで給食に代わる弁当を作って希望する子どもの自宅に配達したり、子どもを預かっている学校や放課後児童クラブに、自治体が牛乳、パン、ヨーグルトを昼食として提供した例もあった。

運動機会の確保に校庭を開放
 休校中の子どもの運動機会の確保は心身の健康において欠かせないため、曜日ごとに学年を指定したり、支援員等を活用したりして校庭開放を実施した事例もある。たとえば東京都三鷹市は、小学校は午前・午後で学年を指定して、校庭での運動の機会を確保。中学校は午後(昼休み)の軽い運動をイメージした活動場所として利用した。また、スポーツ庁や日本レクリエーション協会は、家庭でも可能な運動遊びやスポーツメニューを紹介するHPリンク集を公開した。
 卒業式等の工夫では、卒業式の映像を中継し、参列できない保護者や在校生がオンラインで参加できるよう配慮する。在校生による合唱や演奏は休業に入る前に事前に録音して卒業式に流すことで、いつもの式に近づけようとした学校もあった。

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