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近年の災害による学校施設の被害状況

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耐震化の成果があった熊本地震
 文科省は、近年の災害による学校施設の被害状況を公表している。まず、激甚災害における学校の被害としては東日本大震災が最大で、27都道府県で約8千校が倒壊や半焼、津波による流出等の物的被害を受けた。休校措置は4千校近く、避難所開設は6百校を超え、その災害復旧費は、公立校だけでも1700億円に迫る。
 6県を跨ぎ約千校が被害に遭った熊本地震では、避難所を開設した学校は全体の5割となる4百校近くに及び、避難所に指定されていない学校でも多くの避難者の受け入れを行った。校舎など建物被害では、ブレースの破断、外壁等のひび割れ、天井の落下などの被害が目立った。しかし、学校施設本体が崩壊するといった被害はなく、東日本大震災以降に急ピッチで進められた耐震化(熊本県の公立小中学校耐震化率98・5%)の成果と考えられる。

台風で2千校以上に物的被害
 また、近年では気象変化に伴って大型化した台風や線状降水帯が引き起こした大雨による被害も多くなっているのが特徴だ。災害救助法適用自治体の適用が過去最大の14都県・390市区町村に上った「令和元年東日本台風」では、学校施設においても31都道府県で2千校以上に物的被害があり、校舎・体育館の床上浸水、グラウンドの浸水、法面崩壊等が報告されている。
 加えて、平成30年と令和2年の7月豪雨における被害では、ともに2千校以上が休校措置を余儀なくされた。

非構造部材の耐震化に遅れ
 こうした中で、学校施設の防災対策がどこまで進んできたかというと、まず地震対策では構造体と屋内運動場等の吊り天井等の耐震化は、現在ではおおむね完了している。ただし、吊り天井以外の非構造部材の耐震化は5割程度に留まっている。
 一方で、私立学校は耐震性がない建物がいまだ2千校近く残っており、吊り天井の落下防止対策も8割程度、その他非構造部材の耐震化は4割程度と改修を急ぐ必要がある。事実、熊本地震で被害を受けた私立学校241校の中で、耐震化が未完了の建物では構造体に甚大な被害が生じたものがあったほか、天井材・照明器具・ガラス・外装材・設備器具の破損等、非構造部材にも多数の被害が発生している。
 そのため文科省では、私立学校施設の耐震化事業に係る国庫補助率を2分の1にかさ上げするなどして、早急な改修を求めているところだ。なお、特定天井の落下防止対策の取り組みとしては、学校教職員向けに耐震点検に関するガイドブックを作成しているほか、点検のポイントをまとめたYouTube動画も公開している。

津波対策では高台移転や高層化が推進
 津波に対する安全対策では、高台移転や高層化が進められるとともに、高台へ緊急避難できる経路の整備や、屋上へ迅速に避難できる屋外避難階段の設置が実施されている。高台に移転する場合は、地域の避難所として活用することも考慮し、地域住民との合意形成を図ること。高台や屋上に避難する想定では、夜間や休日にも進入可能にすることが重要になる。
 河川の氾濫や大雨による浸水、土砂崩れの危険性を示す、自治体における洪水ハザードマップの作成率は、想定最大規模対応は約83%、計画規模対応は約98%に達している。精度を高めるため昨年には法改正を実施し、作成対象が約2千河川から約1万7千河川に変更されている。

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