インクルーシブな道徳科授業づくり 個別最適な学びの実現
19面記事田沼 茂紀 編著
全員参加できる工夫例、考え方を提示
教室にはさまざまな子どもがいる。道徳的価値を自分ごととして捉えるのは困難を極めよう。その手助けとなるアイデアを提示した。
例えば、小学1年生教材「はしの上のおおかみ」。初めてのことに不安感が強い子どもがいれば「学習の流れ」の事前配布や、授業の最初に取り上げる道徳的価値を伝え、平易な問い掛けで体験したことがありそうな感情を呼び覚まし、導入。考えをすぐにまとめられない子がいれば、離席して友達の意見に触れる「聞くタイム」を設ける。また、役割演技によって子ども同士が話し合う機会をつくる。学習のまとめは、書くことに抵抗感がある子に対応して板書を工夫、参考にしてもらう。
こんな授業づくりの実際が、12事例掲載されている(3章「インクルーシブの視点を入れた道徳科授業づくり」)。
その前提になるのが「道徳科授業で押さえておくべきインクルーシブな視点」(2章)。認め合える「人間関係構築」、視覚化や見える化をする「教材提示・教具」など15の視点と実現するためのポイントを示す。
「インクルーシブ教育と道徳科」(1章)は実践の理論的支柱だ。子どもの困難さを緩和し、道徳授業を支援する手だての考え方を示し、「自分の善さを肯定して自己実現する」力を育成する必要性を指摘する。
本書が提示する全員が参加できる授業づくりの「少しの工夫」を試みてほしい。
(2420円 明治図書出版)
(矢)