「先生方と一緒に授業を楽しく」リンク・インタラックが授業準備支援のクラウドサービス
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英語の指導案や実践動画を公開
教員の多忙化解消にも
ALT配置の民間最大手、リンク・インタラックが6月に公開した、英語教員向けクラウドサービス「Teachers Cloud(ティーチャーズクラウド)」が好評だ。英語を指導する教員の授業準備の負担を軽減し、指導力向上につなげることを目的に、豊富な教材や実践動画を提供中だ。管理職や指導主事、現場教員から「現場の教員のモチベーションアップにつながる」「小学校英語の助けになる」と反響が寄せられている。
英語教員向けに公開
新学習指導要領が小中高と順次実施される中、英語科はよりコミュニカティブな指導、4技能のバランスの取れた指導が期待されている。また、1人1台端末の活用や働き方改革を踏まえ、現場では効率的かつ効果的な授業準備や校内研修も求められている。
そうした現場を支えるべく、リンク・インタラックが今年6月に立ち上げたのが、教員向けの新サービス「Teachers Cloud(ティーチャーズクラウド)」だ。「授業準備の時間がなかなかとれない」「英語を教えることに自信がない」「ALTとの効果的なチーム・ティーチングのやり方がわからない」などの教員の悩みを解決するため、豊富なコンテンツをクラウド上に公開し、時間や場所にとらわれず利用できるようにした。
小中の全教科書に対応
提供中のコンテンツは主に「教材」「スキルアップ動画」「ALT活用実践動画」の3分野。同社がこれまでALT事業で培ってきた指導ノウハウや教材がすべてデジタル化されているのが特徴。
「教材」は年間指導計画やALTを活用する場合の指導案、絵カード、ワークシート、歌、動画などの視聴覚教材を1万5000点以上揃えた。
小学校は外国語活動の教材や各教科書に対応した指導案や付属教材、中学校は令和3年度の各教科書に対応した活動案集、高校はレッスンプラン集と付属教材、そのほか特別支援児童生徒向けの教材がある。その日の「授業のネタ」としてすぐに使えるのが魅力だ。
教材例
授業動画を解説付きで公開
「スキルアップ動画」は元文部科学省教科調査官で、敬愛大学教授の向後秀明氏らをはじめとする有識者の講演動画や、指導実演動画を集めた。コロナ禍で対面の研修が困難な中、教員が各自で視聴すれば指導力の向上につながる。「ALTを活用した評価の方法」の動画は、今後、パフォーマンス型のテストを導入したい学校の参考になりそうだ。
「ALT活用実践動画」は、実際の教室で収録した授業動画を公開する。授業のポイントは動画中にテロップや解説音声で示されるので、ALTとの役割分担や児童生徒の反応、教員の声掛けなどが確認しやすい。全国のベストプラクティスをいつでもどこでも視聴でき、公開研究会に参加したような学びを得られる。
ALT活用実践動画例
450自治体で導入セキュリティも万全
Teachers Cloudは現在、同社と契約中の教育委員会において無料で利用できる。現在、450自治体で導入されており、7500校以上で利用可能となっている。
学校ごとにアカウントを設定し、さらに教員個人のログインIDとパスワードを設定できるのでセキュリティ面も安全だ。
GIGAスクール構想の実現により、学校のクラウド接続環境は改善が進んでいる。これまで音源などの教材はDVDやCDを再生するなどのひと手間がかかっていたが、Teachers Cloudなら、教員のタブレットを教室に持ち込んで大型ディスプレイに投影すれば時間の節約になる。
動画コンテンツは約5分と短めに収めた。タブレットが手元にあれば授業の「すきま時間」を有効活用して、授業準備や自己研鑽に役立つ。
研修に活用で意欲向上
開設から約半年が経過しTeachers Cloudは現場から教育委員会までその有用性が認められつつある。
「小学1・2年の指導案作成で困っていたところ、ちょうど公開されて助かった」「歌やカードなどの教材がまとまっているので、授業準備が楽になる」(小学校英語担当)、「コロナ禍で学ぶ機会も減っている先生方にとって、このような提案は素晴らしい」「教員向けの研修に使えそう」(教育委員会指導主事)、「ALT活用が動画であるとイメージしやすい」(教育委員会課長)など、反響は大きい。
共に作るクラウドに
企画開発責任者で同社編集長の大野絢子氏は、Teachers Cloudを「先生の英語指導に関する不安や悩みを払拭し、授業を楽しくすることを第一に考えた。指導案やワークシートなどの教材は英語版もあるので、ALTに見せれば展開したい授業のイメージがすぐに伝えられる」と話す。
8月に同社が開催した教員向けウェビナーでは、Teachers Cloud上で掲載している活動案の活用事例、教室でのALTとの授業づくりの実践を紹介。「2学期にしようと思っていた活動の実践例、タブレットの活用例はとても参考になった」「新学期も頑張れそう」と前向きな声も寄せられた。
授業実践動画は今後も順次追加していく予定だ。撮影協力に応じたある自治体の指導主事は「自校の授業が載るのは緊張するがワクワクもしている。先生方の励みになる機会になった」と、市町村の英語教育全体が前進するチャンスと受け止めているという。
大野氏は「先生が楽しく授業ができれば、子どもたちも楽しく英語を学べる。現場の先生方の声を反映しながら、先生が『子ども一人ひとりの可能性を広げる、豊かで楽しい』授業づくりができる、その一助になれれば」と、今後も機能や教材コンテンツの充実に力を入れて取り組む姿勢を示している。