坂道や狭い道が多い通学路の安全対策として自転車用ヘルメットの着用を徹底
12面記事埼玉・川口市立神根中学校
学校独自の条件で自転車通学の許可証を発行
川口市では、自転車が関係する事故が人身事故全体の約3割と高い数値を占めていることから、2018年に児童が自転車に乗車する場合のヘルメット着用や自転車損害保険への加入の義務化などを軸にした「自転車の安全な利用の促進に関する条例」を制定し、市民総ぐるみで自転車の安全な利用の促進に取り組んでいる。
こうした中、市立神根中学校では、それに遡ること10年前から自転車通学の生徒にヘルメット着用を義務づけている。その理由について、交通安全担当の高橋拓己教諭は「本校では生徒数530人に対し、自転車通学は300人を超えています。しかも、通学路は坂道や見通しの悪い狭い道が続いており、交通量の多いICや県道にも接しているという地域の事情があります」と説明する。
同校が自転車通学を認めているのは、学校までの距離が1・5km以上や防犯上の理由で通学に時間がかかる場合だ。そこには、ヘルメットの着用や自転車損害保険の加入、学校において定めた自転車利用の校則を守るといった条件が含まれている。加えて、自転車通学に必要な許可証の発行も「一度で合格する生徒はほとんどいません」と語る独自の自転車安全テストを課し、生徒に対して交通ルールの理解を図っている。
自転車用ヘルメットを学校で一括販売
自転車用ヘルメットは個人で購入するほか、SGマーク認定で安全基準に適合したカワハラ製のスポーツタイプを入学後に学校で一括販売をしている。保護者負担とはなるが、学校納入用として市販より安く購入できるのがメリットだ。
自転車事故で死亡した人の約7割が頭部に致命傷を負っていることからも、命を守る備えとしてヘルメットの着用は欠かせない。高橋教諭も「実際に、過去には生徒がヘルメットをかぶっていてよかったと感じた事故もありました」と重要性を指摘する。
一方、学校の交通安全教育としては、地域の警察に自転車の安全な乗り方などを指導してもらうとともに、スタントマンが交通事故を再現する交通安全教室なども実施している。また、数年前には事故が多発した急な坂道を避けるため、新しい通学路を設定。YouTubeにアップするなどして安全対策に努めている。
安全意識の向上とともに、自衛の手段が大切
こうした取り組みによって、「たとえば部活動の大会や練習試合などで自転車を使うことがありますが、その際もきちんと交通ルールを守って走行するようになっています」と生徒たちの安全意識の向上に手応えを感じている。
それでも、自転車通学の生徒が年々増えている現状を考えると、学校での指導はもちろん、子どもの安全を確保する道路環境の整備や、大人も含めた社会全体の交通マナーを高めていくことが必要と訴えた。
文科省は7月、八街市で下校中の児童が死傷した事故を受けて小学校を対象に通学路を点検するよう依頼したが、全国には同校のように危険箇所が残る通学路も数多く存在する。だからこそ、安全意識の向上とともに、ヘルメット着用をはじめとした一人一人の自衛の手段が大切になるのだ。