令和3年通常国会質疑から【第8回】
6月に閉会した通常国会では令和3年度予算案や法案の審議を終えた後も衆議院文部科学委員会、参議院文教科学委員会では、教育問題をめぐってさまざまな討議があった。6月8日の文教科学委員会では、視覚障害のある高校生が使う拡大教科書は自己負担で購入する上、高価であることを舩後靖彦議員(れいわ)が指摘。対応を求めた。
高校生の拡大教科書に価格差費補填を
舩後議員 高校における視覚障害のある生徒向けの拡大教科書、点字教科書の負担軽減策について質問いたします。
現在、義務教育無償の精神にのっとり、小中学校では拡大教科書、点字教科書も無償となっております。また、高校は有償ですが、特別支援学校高等部では就学奨励費により自己負担がありません。
しかし、一般の高校に通う弱視の生徒さんが拡大教科書を使う場合、通常の検定教科書の数十倍、安いもので一万数千円、一冊の教科書を分冊した拡大教科書では数万円に及ぶ費用を自己負担しなければなりません。また、そもそも教科書会社が拡大教科書を作成していない場合、ボランティアに製作してもらいますが、その実費がやはり一科目数万円掛かってしまいます。
個のニーズに応じた教科書を確保するために、これほどの格差を放置してよいのでしょうか。弱視の生徒が特別支援学校に就学すれば拡大教科書は無償、地域の高校に行けば自己負担というのは、教育の機会均等という観点から問題ではないでしょうか。電子教科書やPDF版が普及しても、紙の拡大教科書が必要なごく少数の生徒が取り残されるとしたら、特別なニーズに対する支援になっていないのではないでしょうか。
是非、拡大教科書の価格差の補償を御検討いただきたいと存じます。いかがでしょうか。
課題としては認識している
文科省初等中等教育局長 教科書につきましては、御指摘のとおり、義務教育段階では、憲法第二十六条に掲げる義務教育無償の精神をより広く実現するため無償で提供されておりますが、高等学校段階では、御指摘のとおり、拡大教科書を含め有償となっております。
この差の補償をとの御質問ですが、例えばということで、特別支援教育就学奨励費を充実してはとの御指摘もいただくことはございますが、この特別支援教育就学奨励費については、これまでも制度の充実に努め、この十年間で受給者数は約十万人増、予算額も約四十六億円増と拡充を図ってきているところですが、対象を高等学校まで拡充することについては、様々な御要望がある中で、制度全体を見通した慎重な検討が必要であると考えております。
また、通常の検定教科書では学習することが困難な生徒の用に資するため、タブレット型情報端末により教科書デジタルデータを拡大して使用するPDF版の拡大図書、あるいは教科書の内容を読み上げることを通じて学習を支援する音声教材について、これまで高校に在学する子供たちを前提に調査研究を進めてまいりまして、その成果物である教材を高等学校を含めた障害のある児童生徒に無償で提供させていただいているところでございます。
そうした中で、御指摘いただいた課題については文部科学省としても認識をしているところでございまして、どのような対応が可能か、引き続き検討をしてまいります。
(6月8日参議院文教科学委員会)