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日本と韓国における多文化教育の比較研究

14面記事

書評

学校教育,社会教育および地域社会における取り組みの比較を通して
呉 世蓮 著
違いや課題、実地調査基に分析

 読者には「多文化教育」よりも「国際理解教育」の用語の方がなじみ深いのではないだろうか。多文化教育は、文化的多元主義に立脚し、少数民族や性的マイノリティー、障害者などさまざまな文化的グループを多文化の枠組みに入れ、差別を克服するための民主主義的な教育を模索するものだが、日本の場合、国際理解教育に包括されることが多い。
 一方で、韓国では「国際理解教育」と別に「多文化教育」が「2007改訂教育課程」(学習指導要領に相当)から例示された。従来、多くの共通性が指摘されてきた両国であるが、その違いは一体どこから生まれたのか、実際、教育現場では、どのような取り組みが行われているのか。両国の今日的課題はそれぞれ何か。
 本書は、日韓両国に多くの関わりを持つ著者が、教育制度を歴史的、地理的、民族的、政治的、経済的諸要因によって形成されるものと捉え、諸資料に基づき要因分析を行うとともに、両国の公立小学校や社会教育施設での参与観察やインタビューなどのフィールドワークを通じて整理した博士論文だが、平易な記述となっており読みやすい。
 SDGsとしても重要となる「多文化共生」の理念も寛容や不干渉といった人権の問題として捉えられず、言語対応や適応支援になったりする。こうした同化・排除意識は多文化教育だけで解決できるものではないが、その小さな一歩にはなるだろう。
(3850円 学文社)
(元兼 正浩・九州大学大学院教授)

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