「課題研究」でコミュニケーション力
10面記事学校推薦・総合型選抜に勝つ 中
大阪教育大学附属高校平野校舎
年を追うごとに、「学校推薦型選抜・総合型選抜」(以下、同選抜)を受験する生徒が増えている大阪教育大学附属高校平野校舎(広谷博史校長、生徒360人)。昨年度は一学年約120人のうち、24%が同選抜で進学した。およそ4人に1人という割合だ。受験者数も増え、4年前と比べて2倍以上になっている。
この3年間、京都大や大阪大、神戸大、大阪市立大など、国公立大学でも「総合型選抜入試」で2倍以上の生徒が進学している。「入試形式や内容の変更には敏感で、生徒たちはよく情報を集めている」という進路研究部部長の松田雅彦主幹教諭。「同選抜の活用は、志望校に合格する機会やチャンスが増えることにもなる」と話す。
同選抜を突破する上で、求められることの一つがコミュニケーション力。その力を育む上で、同校では「課題研究」の学びが生きているという。
平成27年度にSGH(スーパーグローバルハイスクール)指定を機に、総合的な学習の時間のカリキュラムを系統的に見直した。令和2年度からは、国内外の高校や大学と連携するWWL(ワールド・ワイド・ラーニング)拠点校に指定され、さらに改善を加えた。生徒たちはグローバルな課題の中からテーマを決め、グループ研究に取り組む。さまざまな場面で話し合いを重ね、メンバーと折り合いを付けながら行動に移す。校外活動を意識的に増やすだけでなく、研修旅行(タイ、カンボジア)や海外の高校生との交流(台湾)、「世界津波の日高校生サミット」(研究発表、討論を英語で実施)など、生徒たちにとって多様な経験を積める環境にもある。
伝えたいことを文章で表現する小論文、さまざまな質問に答える面接。そこでは自分の言葉を使い、多様な表現ができているのは多くの経験があるからこそ。「教わったことや聞いた内容を、そのままアウトプットするだけでは言葉に力が出てこない」と語る松田主幹教諭。活動を振り返り、「次はこうしよう!」と頭の中でPDCAを繰り返す。こうした点も、さまざまな力の育成につながっている。
進路指導は1年生の段階からスタートする。進路探しには同校のOB・OGがサポート。各界で活躍する卒業生による「キャリアガイダンス」(1年)、大学進学に向けた「学部・学科ガイダンス」(2年)を行い、そこでは諸先輩から合格体験談や学習方法の助言を聞くことができる。一人一人の志望や適性を第一に考えた「進路ガイダンス」(3年)も、ほぼ毎月行っている。
長い間、進路指導に関わるカリキュラムは変わっていない。「課題研究」を通して自らのアピールポイントが増えたことで、「同選抜を活用したいと思う生徒が増えた」と語る堀川理介副校長。同校は他校と比べて小規模校である。全教員が全ての生徒の顔と名前が一致するような状態だ。職員室に進路などの相談に来ると、どの教員も対応できる環境にある。
コロナ禍の中、現在はフィールドワークの実施が難しいのが課題の一つ。今後はウェブの活用に加え、生徒の学びに刺激を与えるような機会をさらに増やすよう模索していく。