木村　泰子・工藤　勇一・合田　哲雄　著
忖度なし、ほとばしる熱い思い

　著者の名前、タイトルを見て期待感いっぱいで拝読。いや期待以上の内容。副題の「学校を変える、本気の教育論議」通り、３者の教育改革の熱い思いが伝わってくる。本書は４日間展開された座談会の内容を再構成しているが、まさに忖度なしの本気の教育論議だ。
　「コロナ禍で見えてきたこと」「これからの学校、教職員」「ロードマップを描く」の３章構成。どの章も論点ごとのポイントがグラレコ（グラフィックレコーディング）でまとめられている。また論議の中で使われた言葉の注釈や解説の掲載もあり、より理解が深まる。
　教育改革を進めるに当たり著者３人が語る共通のキーワードとして「自律」「目的と手段を取り違えない」「子どもを主語に取り組む」等が挙げられる。「従前の『当たり前』を断捨離」「子どもを育てる学校から『子どもが育つ学校』へ」など、本気で教育改革を進められてきた著者だからこその言葉が並ぶ。
　「あなたの学校教育の最上位目的は何ですか」と問われたら、何と答えられるだろう。自分の言葉できちんと語ることができるようでありたい。
　読後は痛快な思いと教育という営みの重さと深さ、尊さに感じ入った。そして考える。本書を前に考えずにはいられない時間が押し寄せる。「何のために？」「自分はどうする？」と、自問自答。この一冊の本との出合いは貴重な邂逅。
（１９８０円　教育開発研究所）
（藤本　鈴香・京都市総合教育センター指導室研修主事）