子どもを面白がらせるワザ
16面記事AL時代でも必要な教育技術シリーズ
多賀 一郎・俵原 正仁 著
教育技術に加え姿勢を学びたい
「教育技術」をウリにする書物は数多く発刊されている。そして、その多くは技術論をしかつめらしく語る理論書であり、結局分かったようで使えないものとなる。その点、本書は安心だ。平たく言えば実践事例集であって、教師と子どものやりとりがそのまま登場する。難しいこともなく、気軽に中身に入っていける。著者は言う。本書は名人芸ではない基礎・基本の技術を紹介したいのだと。
それならばと、以下、各章から幾つか事例を紹介してみよう。
まず1章では、始業式での出会いの演出例がある。すぐに使える事例が生な会話のまま紹介される。感心させられた。2章は授業場面である。漢字学習のやる気を高める手だてが面白い。もちろん他教科の実践例も紹介されている。3章では、ついついやってしまう失敗対策事例が胸を打つ。トラブったときこそチャンスと捉える発想の転換術は大いに参考になるはずだ。
とはいえ、本書を薦める理由は、それにとどまらない。真の価値は「(子どもを)よく観察して適切な言葉掛けを」という著者の姿勢に学んでほしいところにある。「力量を上げようと学び続けていくことさえできれば」との姿勢も本書の随所からにじみ出ている。この点も読み取ってほしいところだ。
「すぐに使える」ものでありながら、ずっとそばに置きたい、そんな一冊だ。
(1760円 学事出版)
(八木 雅之・元公立小学校校長)