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【寄稿】失敗したっていいじゃないか。人間だもの

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論説・コラム

 元高校教員の山口権治さんから、新規採用されたころの経験談を綴ったエッセイが届いた。部活動の懇親会を盛り上げようとしたところ、警官がやってくる騒ぎに。だが、熱い思いは人に届くようだ。教職の素晴らしさが伝わってくるお話です。
 山口さんは、昭和31(1956)年、静岡県生まれ。現在、浜松市教育委員会教育総合支援センターに勤務している。著書に『ピア・サポートを生かした学級づくりプログラム』(明治図書出版)、『不登校・いじめを起こさない集団作り-ピア・サポートに学ぶ』(公益財団法人モラロジー研究所)がある。


写真=山口権治さん

 私は現在64歳です。若いころ教師として大失敗をしたことについてそのあらましをお伝えします。
 私は富士市にある公立の商業高校に新規採用教員として勤め始めました。女子ソフトテニス部の顧問をすることになりました。テニスはしたことがありませんが、なんとか上手くなり良い指導者になりたいと、平日ばかりでなく土日も生徒と一緒に練習に励んでいました。夜は市の体育協会の主催する勉強会にも参加しました。さらになけなしのお金を使い当時出たてのビデオを購入し、空いている時間は毎日ビデオで指導のポイントや試合の進め方を勉強しました。
 私がテニスの指導に頑張っていることは近隣の中学校の先生方の知るところなり、有望な選手が入学してきました。その選手はOBの指導などもあり順調に力をつけ、県大会では勝ち上がり、最後の枠で東海大会に出場することが決まりました。
 東海大会の1回戦では名古屋の強豪私立高校と対戦しました。試合は相手のミスが多く予想外にもこちらの有利に進んでいきました。マッチポイントをつかみ、あと1点取れば勝てるところまで来ました。
 しかし、1つのプレーの失敗から流れが変わりその試合は負けてしまいました。この時の私は未熟で適切な指示ができませんでした。指導者としての指導力の無さを痛感した出来事です。
 そこで夏休みに友人にお願いして、横浜のテニス有力校を学校に招いて合同練習を行いました。その中で選手たちは練習に取り組む姿勢を学びました。その晩お礼の意味を込めて、練習後に親睦会を計画しました。料理は生徒達が好きそうなものを揃えました。さらに知り合いのスナックからカラオケセットを借りてきて(当時カラオケセットは飲み屋にしかありませんでした)カラオケも企画しました。
 いよいよ練習は終わり、懇親会が始まりました。同僚の若手の先生も招待して場を盛り上げました。カラオケが始まり最高潮に達したその時、裏口から突然警察官が入ってきました。
 私はびっくりしてすぐに対応しました。理由を聞くと、近隣の住民から騒音の苦情が入ったということで見に来たということでした。私はことが大きくならないよう必死に事情を説明し警察官には帰っていただきました。一同はショックを受け懇親会は台無しになってしまいました。
 私は相手校の先生方や生徒、自校の生徒、招待した同僚の先生方に大変申し訳ないという気持ちでいっぱいでした。
 翌日事務室に謝罪に行きました。校長先生にも怒られることを覚悟していました。事務室のお世話になっている方が、「苦情がいっぱい来ました。こちらで丁重に謝っておきましたから大丈夫ですよ。校長は夏休みでお休みだから、このことはわからないよ」と慰めてくれました。感謝!感謝!です。
 その時の同僚と会うと必ずこの話が出ます。今では笑い話になっています。人を喜ばせようとした結果、大失敗となりました。人のために一生懸命やれば、それを見ている人は必ずいることも分かりました。世の中まんざらでもないと思っています。

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