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防災減災対応システム「BOGETS(New PA)」で、停電時にも体育館のエアコンを稼働

14面記事

企画特集

LPガスをPAガスに変換する操作を簡便化した「New PA」

大阪・寝屋川市

 寝屋川市では昨年末、中学校の体育館におけるエアコン整備と併せてI・T・O(株)の防災減災対応システム「BOGETS(New PA)」(ボーゲッツ)を導入。災害発生時に都市ガスが停止した場合でも、備蓄したLPガスを都市ガスに変換することで一定期間稼働できるようにした。そこで、導入経緯など詳しい話を教育委員会に聞いた。

宮永 稔生 寝屋川市教育委員会学校教育部施設給食課次長

避難所の独立したローカルエネルギーに

ライフラインが停止した場合の空調維持に
 「BOGETS」の導入は、学校体育館へのエアコン整備がきっかけになった。もともと市では夏の熱中症対策として整備を進めていく方針があり、災害時は地域の避難所になることから、冬の暖房にも活用できる利点があった。
 しかし、体育館のような広い空間ともなれば1校あたり約10台を設置することになるため、コスト的な問題も考慮しなければならない。したがって、まずはクラブ活動や学校行事等で使用頻度の高い中学校の体育館(11校)から整備することになったという。
 その中で、「災害によってライフラインが途切れたり、避難所生活が長引いたりした際も空調の稼働を維持し、高齢者などが体調不良を起こさないようにできるシステムとしてBOGETS(ボーゲッツ)を導入しました」と宮永次長はねらいを語る。
 なお、導入するにあたっては、同じ大阪の箕面市での先駆事例を参考にしたこと。また、財源の確保としては東日本大震災を教訓に設けられた緊急防災・減災事業債を利用することで、市の負担を抑えることができたと振り返る。

中学校の体育館に整備されたエアコン

災害に強いLPガスを備蓄し、都市ガスに変換して活用
 そんな「BOGETS」は、あらかじめ備蓄しておいたLPガスを活用し、都市ガスと同じ燃焼特性を持ったPAガスと電気を作り出せるのが特徴。今回の中学校体育館の場合は、通常は都市ガスでエアコンを運転し、災害などによって遮断されたときにPAガスに切り替えることができる。
 こうしたLPガスを自衛的に備蓄するメリットとしては、耐衝撃性や圧力検知バルブなどの機能も備えた安全設計に加え、灯油や軽油と比べて長期保管しても劣化しないため、ガス用発電機などのバックアップ燃料に適していることが挙げられる。
 「燃料となるLPガスボンベは、体育館横に小屋を設けて16本を備蓄。都市ガスが復旧するまでのおよそ3~4日間をまかなえる想定です」と説明。また、室外機も始動時に電気が必要になるが、自立バッテリーを搭載した機種を整備しており抜かりはない。
 ほかにも体育館の防災機能の強化では、非構造部材の耐震化や小型発電機、大型扇風機、非常用電話、身障者用のトイレやスロープを整備するとともに、備蓄品を集約的に格納する場所の設置も進めているところだ。

災害時に備えて体育館にLPガスボンベを16本備蓄

音声ナビゲーションによる簡単操作、ガス漏れや誤作動も自動制御
 その上で、宮永次長が「BOGETS」を導入したもう1つのポイントと指摘するのが、音声ガイドによるタッチパネル方式を採用し、災害時のスピーディーな復旧を支援する「New PA」(※)の操作性の良さだ。
 ※New PAはBOGETSの重要な構成機器の一つであり、LPガスから都市ガスと同じ燃焼特性を持ったPAガスを作り出す機器。
 「いざというときに使うためには、ガスに関する専門知識がなくてもPAガスに切り替えられる操作の容易さが必要です。11校ともなれば、教育委員会としてもすべての学校に即対応できるとも限りません。その点、「New PA」なら音声ガイドで誰でも操作できるよう手順をナビゲーションしてくれるとともに、ガス漏れの検知や誤作動も自動でリカバーしてくれる。気が動転する災害時だからこそ、欠かせないシステムだと考えました」と強調する。
 その言葉通り、「New PA」には「自動ガス漏れ確認機能」や「異常圧力遮断機能」といった安全を守る機能のほか、「原料ガス残液量の計測機能」や「自動パージ機能」も搭載するなど、便利で安心な機能を備えている。
 「今回、災害時のライフライン維持に対応したシステムを導入したことによって、学校内の防災意識を高めていただければ。教育委員会としても、そうした学校現場の力になれるように協力をしていきたい」と宮永次長。今後については具体的な計画はないが、実際の中学校における空調使用のランニングコストを見ながら検討していきたいと抱負を語った。

防災機能の強化に、ガス変換器「New PA」の導入を
 実は、1月の成人式は新型コロナの影響を受けて、各中学校の体育館で開催された。
 こうした学校の体育館における空調整備には、今回の寝屋川市の取り組みのように、地域の避難所としての役割を担うことから防災の観点も重要になる。そのため、国は補助金を交付し、災害時に強いLPガスの燃料備蓄を後押ししているところだ。また、寝屋川市で利用された緊急防災・減災事業債はガス変換器である「New PA」が補助対象に指定されている。避難場所での生活環境の改善として空調整備が求められる一方、防災機能の強化についても国が支援している状況であるが、学校施設での導入は理解が遅れていることもあって、まだ実績は多くない。「BOGETS」を販売するI・T・O(株)は、今後もライフラインが途切れたときに誰でも速やかに復帰操作ができる「New PA」の特徴を周知し、学校施設の防災機能強化の1つとして提案していく意向だ。

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