適応指導教室の実態と不登校児童・生徒の活動や支援策
トレンド平成30年度に文部科学省が行った調査によると、全国の小学校・中学校における不登校児童・生徒数は16万人を超えており、6年連続で増加し続けています。また、不登校の児童・生徒のうち約6割が年間90日以上欠席しており、憂慮すべき状況といえます。
これらの調査結果を踏まえ、文部科学省が不登校児童・生徒の学校復帰を支援する取り組みとして掲げているのが、適応指導教室の設置促進や機能の強化などです。今回は適応指導教室設置の目的や実態、不登校児童・生徒を支援する国の取り組みについて解説します。
国が設置促進や機能強化に取り組む「適応指導教室」とは
適応指導教室とは、不登校児童・生徒指導や学校生活へ復帰を支援することを目的に、教育委員会および首長部局によって学校以外の場所や余裕教室等に設置された施設のことです。
教育支援センターとも呼ばれ、児童・生徒が在籍する学校と連携を取り、個別カウンセリングや教科書を用いた指導、集団での指導などを計画的かつ組織的に行います。教育相談室のように、児童・生徒の相談を行うだけの施設は含みません。
文部科学省が平成29年度に行った適応指導教室に関する実態調査では、適応指導教室を設置している自治体は全体の約63%、設置していない自治体のうち約40%が設置予定もしくは何らかの検討をしていると回答しました。なお、適応指導教室を設置していない理由の上位を占めるのは、運営予算や場所の確保が困難という問題です。
適応指導教室で行われる活動内容や学校復帰率、そして教員になる条件とは?
適応指導教室では、不登校児童・生徒の学校復帰を支援するためのさまざまな取り組みが行われています。また、施設外での取り組みには職員による児童・生徒の家庭への訪問指導も含まれています。
前述した実態調査の結果をもとに、適応指導教室での活動内容や子どもたちの学校復帰率、職員の資格の有無などを読み解きます。
施設内外での活動内容と1日の流れ
適応指導教室で実施される主な活動は、カウンセリングやグループ面接などの教育相談活動、自然での宿泊キャンプやボランティア活動などの体験活動、手芸や調理実習、ゲームなどのグループ活動です。
全体の96%は適応指導教室で個別の学習支援が行われている一方で、授業や講義形式の学習支援を行っている施設は全体の30%にも達していません。また、割合としては全体の2割未満ですが、学習成果や作品の発表会を取り入れているところもあります。
適応指導教室での1日の流れは各自治体によっても異なりますが、学習活動やグループ活動、運動タイムのほかに、朝の会や帰りの会、清掃活動などが行われます。多くの施設が平日は終日活動しており、一部の施設は土曜日も活動しているようです。
家庭への訪問指導
文部科学省の調査では、全体の約34%の施設が家庭への訪問指導を実施しているという結果が出ています。訪問は平均2名の職員で行われており、定期的なものではなく、必要に応じて訪問指導を実施している施設が多いようです。
大阪の教育支援センター(適応指導教室)では、家庭教育支援サポーターが保護者のもとに足を運び、保護者から子育てに関する悩みや不安を聞き出しつつ、カウンセリングの知識を活かして保護者のエンパワーメントを図っています。
学校復帰率と援助目標の変化
義務教育段階で適応指導教室に在籍する児童・生徒の数は学年が上がるにつれて増加しています。男女比では、男子が約46%、女子が約54%、女子の在籍者数がやや多い結果が出ています。
同様に、学校への復帰率も学年が上がるにつれて高くなっており、小学校の復帰率が約42%、中学校では約35%、高等学校では約43%との数字が出ています。いずれの校種においても、子どもたちの半数以上が6カ月以上適応指導教室に在籍しています。特に中学校においては、在籍期間が半年を超える生徒は全体の約73%です。
なお、調査結果によると、学校への復帰を重要な目標として掲げる施設が約7割と最も多いことが分かります。一方で平成27年度の調査結果と比較すると、その割合は減っています。現在は学校復帰を支援しつつ、子どもたちの社会的自立や居場所の提供を重要と考える施設の割合が増えているようです。
職員の数と必要な資格
適応指導教室では、教育職系の職員や退職した教職員、社会福祉系の職員や学生のボランティアまでさまざまな人が働いています。臨時職員の数も多く、常勤職員の約4倍以上が非常勤職員です。
また、指導を行う職員全員が教員免許を保有しているわけではありません。全体の約82%は教員免許を保有していますが、そのほかにも臨床心理士等の心理に関する資格や社会福祉士、精神保健福祉士など、専門的な資格を保有する職員もいます。
不登校児童・生徒の支援に求められる実態把握と連携強化
年々、不登校児童・生徒数は増加傾向にあることから実態把握や支援体制の強化は、子どもたちを社会に送り出す欠かせない教育施策の一つです。
適応指導教室の支援に加えて、校長のリーダーシップのもと、教員やスクールカウンセラーとの連携協力、個々の状況に応じた学習支援や教育機会の確保など、学校における取り組みを充実させることも重要です。
学校や適応指導教室等の民間施設が保護者と日頃から情報交換や連携に努め、不登校児童・生徒を支援することが求められます。