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教育委員会が本気出したらスゴかった。

14面記事

書評

コロナ禍に2週間でオンライン授業を実現した熊本市の奇跡
佐藤 明彦 著
全教員巻き込んだ仕掛けや成果を紹介

 子どもたちと顔を合わせ、言葉を交わすこともままならぬ学校休業中、急浮上したのがデジタル機器を使ったリモートの学習だった。しかし、全ての家庭に端末があるわけではないし、教員たちが苦心してようやく動画配信にこぎ着けても、双方向の授業を実現できた自治体はわずか数%だったという。
 コロナ禍の緊急事態の中、たった2週間でオンライン授業を実現したのが熊本市教育委員会である。「奇跡」と呼ばれるのは、92の小学校、42の中学校を抱える規模の自治体において、ハード面の整備だけでなく、学校現場の課題を熟知したソフト面での支援策と実現までのスピードである。
 学校のICT化の必要性が叫ばれてきたが、整備には膨大な予算措置を伴うので首長部局の理解が必要である。また、個人情報漏洩や健康面の害などのリスクを恐れて慎重にコトを運ぶ「ゼロリスク症候群」も存在する。
 熊本市教育委員会の施策で注目すべきは、一部の教員だけでなく全ての教員が活用できるようにするための仕掛けと、使用制限は極力かけないという大胆な発想である。
 本書には導入の経緯、予算措置、機器の詳細、研修方法、授業実践事例、ICTの効果、保護者等の感想などの情報が盛られていて参考になる。ICTの導入・整備を急ぐ教育委員会関係者には必読の書であろう。
(1760円 発行 時事通信出版局・発売 時事通信社)
(大澤 正子・元公立小学校校長)

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