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コロナ時代に考えたい学校問題【第94回】

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論説・コラム

「しっかり」を多用する言葉遣い

 政治家の話のなかに、いつも耳障りに感じる表現がある。それは「しっかり」の連呼である。「しっかり、取り組んで参りたい」「しっかり、お願いしたい」「しっかり、やっていますか」と、知らぬ間に、うっかり、ちゃっかり使っていて、聴けば聴くほど「しっかり、やって当たり前なのに、強調されると、しっかり、やってないからだろう」と、感じられて仕方がない。
 「しっかり」の由来は、「悉皆」という。字のごとく、「ことごとく、みな全部」という意味である。何かしら決意のように感じられる。教師も「しっかり、頑張ります」「しっかり、頑張れよ」と話すときがある。「ことごとく全部頑張ります」とか、「全部頑張れよ」という意味だとしたら出来る訳がない。順番や軽重を決めて丁寧に進めること、段取りを組むことで実現を目指すことになる。
 よって決意としての一生懸命もよいが、それで潰れたり鬱になる教員は多い。自分で自分を苦しめる事はやめて、誠実に丁寧に対処しますと、身の丈や力量に合わせてやるようにする事である。自分を大きく見せたり力があるように誇示する言動は滑稽で不誠実に見えることになる。
 今度、政治家の演説や国会中継の話の中に「しっかり」が何回出てくるか数えてみて、その言葉をすべて取り去ったら、その発言内容のレベルが浮き上がってくるので、やってみられてはどうだろうか。人心が乱れると政治も経済にも、そして言葉にも乱れが現れてくる。言葉遣いは心遣いと私は教えている。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

コロナ時代に考えたい学校問題