加配保育士の役割と障害のある子どもに対する国の支援策
トレンド 近年、日本国内で障害を持つ子どもを受け入れる保育所は増加しています。厚生労働省が実施した調査によると、2016年度に保育園等で受け入れている障害児の数は10年前の約2倍にあたる約65000人との結果が出ており、保育所における子どもたちのサポートがこれまで以上に求められるのは明白です。
障害児対応の充実に向けた対応として2018年度の地方交付税で当該予算額を400億円から800億円へ、それまでの2倍の額に拡充しました。さらに保育所や幼稚園、地域型保育事業での職員の加配を示しています。
現役の保育士や幼稚園教諭はもちろん、これから教育者を志す方も加配保育士や加配職員の役割、制度について理解を深めておくことが大切です。
加配保育士とその役割とは
加配保育士とは、保育所で障害のある子どもをサポートする役割を持つ保育士のことです。幼稚園や放課後児童クラブなどでは加配職員と記載されることもあります。障害のある子どもの保育においては、一人ひとりの発達過程や障害の状態を把握したうえで、家庭と関係機関が連携し、適切な環境のもとで教育を行うことが重要です。
それらを踏まえ、内閣府子ども・子育て本部が提示した『子ども・子育て支援新制度』では、障害児保育を推進する取り組みの一つとして障害児2名につき保育士1名を水準として配置するよう記載されています。保育園や幼稚園、認定こども園などの保育施設に加配される保育士や職員は、主任教諭や主任保育士の補助としての役割を持つのが特徴です。
保育士のキャリアアップを含む、国の障害児保育への支援策
冒頭で述べたように、国内で障害のある子どもを受け入れる保育施設が年々増加していることから保育施設における障害児を含む子どものサポートの充実が、今後ますます求められます。
厚生労働省では、子ども・子育て支援新制度のなかで障害児保育に関する支援策として「療育支援加算」と「障害児保育加算」によって代替保育士や加配保育士の配置に係る経費を負担することを明記しています。
公的給付の対象には、保育所や認定こども園、幼稚園のほか、0~2歳児の保育の受け皿として平成27年に新設された地域型保育事業も含まれます。
療育支援加算
療育支援加算は、障害児を受け入れている施設で地域住民の子どもの療育支援に取り組む際、主任保育士が主任業務に専念するために補助を行う者を配置するための経費を負担するものです。
主任保育士を補助する加配される職員に資格の有無は問いません。そのため、必ずしも保育士でなければならない決まりもありません。
障害児保育加算
障害児保育加算では、軽度障害を含む障害児を受け入れる特定地域型保育事業所において、障害児2人に対して保育士1人を配置するために必要な経費を負担します。ここでの特定地域型保育事業所には、居宅訪問型保育を行う事業所は含みません。
療育支援加算との違いは、加配されるのが保育士であるため、保育士資格を保有している必要があるという点です。また、家庭的保育事業を行う施設においては、市町村が行う研修を修了した家庭的保育補助者を1人加配するとしています。
保育士のキャリアアップと保育環境の改善
障害児保育をより充実させるためには、障害のある子どもを受け入れる立場にある保育士が自ら子供の障害に関する知識を向上させることも不可欠です。
保育士の知識向上支援政策
障害のある子どもに対する国の支援施策では、保育士の知識向上や保育環境に配慮した支援政策も打ち出されています。
平成29年度に創設された「保育士等キャリアアップ研修」では、障害児保育を盛り込み、保育現場のリーダー的存在となる職員の育成を目指した研修が行われました。実施に伴う経費の一部を国が補助しています。
保育所の環境改善にも支援を行い、子どもたちの成長を促す
障害児を受け入れる保育所では改修が必要となることも珍しくありません。保育環境改善等事業では、障害児受入促進事業において保育所の改修にかかる経費の一部を補助しています。
そのほか、保育所等を利用する障害児が集団生活に適応するために児童発達支援センターによる専門的な訪問支援を受けられるようにする保育所等訪問支援。保育所の子ども、またはその親が集まる施設で発達障害に関する知識や支援方法の巡回支援を行うための地域生活支援事業など支援施策はさまざまです。
保育士の知識向上や環境整備により全ての子どもをサポートする
加配保育士や加配職員は、幼稚園や保育園、認定こども園など、障害児を受け入れる施設で障害のある子どもをサポートしたり、主任保育士が業務に集中するための補助を行ったりするために配置される保育士や職員を指します。
障害のある子どもをサポートするためには、保育士の加配だけでなく、障害児保育を行う環境をより充実させることが肝要です。
今後さらに障害のある子どもを受け入れる保育施設が増えることが予想されますが、国が打ち出す支援策を活用しながら教育者自身が知識向上やキャリアアップを図り、施設に受け入れる全ての子どもをサポートすることが求められます。