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障害教師論 インクルーシブ教育と教師支援の新たな射程

14面記事

書評

中村 雅也 著
障害ある教員の視点から教育を問い直す

 書名を見て、アレッと思った方もおられるだろう。初めて聞く用語だ。それもそのはず、本書は、著者の学術論文集であり、書名も著者の造語(障害のある教師を視座として既存の教育を問い直す学問領域を示す)である。実は、著者自身が視覚障害がありながらも教壇に立ち、教育現場を体験しておられる。それだけに、新しい研究領域を示す書名は著者の意気込みを伝えているともいえよう。
 内容に入ろう。序章を含め、10章仕立てとなっているが、章名が内容を示している。第1章は全盲教師の生活史、第2章は障害教員をめぐる政策の歴史と現状、以下、障害教員をめぐる諸問題(例えば、就職、職務に関する課題、支援の在り方等々)について調査協力者へのインタビューを中心に著者の論考は進む。厳しい環境にありながらも前向きに生きる障害教師の姿が浮き彫りにされる。知らないでは済まされない内容に、読みながらも姿勢を正し、心洗われる思いになる。加えて、論文集だけに注、引用文献、索引案内等はきちんと整理され理解を助けてくれる。
 読み終えた今、強く残る言葉がある。「支援の客体ではなく、既存の教育を変革する主体としての障害教師」だ。障害の有無ではなく、教育力の有無こそ、教師に求められる必要な資質なのだという当たり前のことを改めて思い知った。
(3960円 学文社)
(八木 雅之・元公立小学校校長)

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