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今だからこそ「子ども発」の学びを バーチャルからリアルに

16面記事

書評

行田 稔彦・船越 勝 編著
諸感覚を働かせて学ぶ実践の数々

 ウイズ・コロナの時代となって、デジタル機器の活用が注目されている。文科省はGIGAスクール構想を前倒しし、1人1台タブレットの配布を急いでいる。ビッグデータを基に個別最適化の学習ができる利点はあるが、一方で子どもたちが仮想現実の世界に浸りきりになることへの懸念もある。
 平成元年改訂の学習指導要領で誕生した生活科は、子どもたちの体験不足を背景として、具体的な活動を通して自立の基礎を養う教科として登場。これまでの黒板を向いて静かに学習する教室風景を一変させ、教師が教えるのでなく子どもの気付きを大事にするなど、教育界にさざ波を起こした。当初は各学校独自の教材開発が行われていたが、近頃は教科書準拠の実践が多くなっている傾向が。
 本書は、教育研究全国集会の「生活科・総合学習分科会」で発表された教育実践報告を基に、25本の実践リポートと教育研究者の3本の論文とで構成されている。仮想現実に触れて実際に体験したと思い込む子ども、汗を流さずにICTを使って楽に利益を得ようと考える若者、他者への想像力を失いSNSで中傷する大人等々、IT社会のひずみがあちこちに出現する現在だからこそ、子どもたちがリアルの世界で諸感覚を働かせて感じ思うことを一層大事にしなければならない。
 本書から実践のヒントが得られるだろう。
(2860円 新評論)
(ま)

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