高本　英樹　著
教師と子どもの意識のズレを切り口に

　書名だけに着目すると、本書は学級経営上に生じる課題解決のためのノウハウ本と思われるかもしれない。もちろん、それらに対する解決法も述べられているのだが、むしろ本来の価値は学級経営の基本姿勢を述べた好著である、と評者は受け止める。
　現在の学校現場では、子どもたちの多様化も進み、一筋縄ではいかない学級経営上の課題も多い。本書は、教師と子どもの意識のズレ（教師の要求と子どもの成長段階の不一致、子どもの力量と課題のズレ、子どもの欲求と教師の無理解）に着目し、その立て直しに焦点を当てて解決策を論じている。
　その述べ方がユニークだ。学級の荒れを時期別に捉え、子どもとの関わり方をチェックリストにまとめて述べる手法なのだ。読者の立場からすれば、思い当たる項目に着目すればよい。しかも、項目の表現までチェックマークである。重点はゴシック体で表示され、まとめのポイントは「～すべし」である。迷わず実践に移せよう。冒頭述べたように、「荒れ」が起こる前でも十分役立つ基本姿勢として使うことができよう。
　本文中、そちこちに、先人の実践例や研究成果を生かした事例が紹介されている。著者が、先例に学び、実際に行い、確固としたものだけを読者に届けようとする姿勢が本書の価値を高めている。読後感がすがすがしい。
（１９８０円　明治図書出版）
（八木　雅之・元公立小学校校長）