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「GIGAスクール構想」一人1台端末導入後の教育について考える<後編>

10面記事

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 GIGAスクール構想に相応する端末の選び方や、ICT時代の学びの環境づくりなどについて、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの豊福晋平氏とインテル(株)執行役員 井田晶也氏が対談。豊福氏は文部科学省による「ギガスクール構想の実現のための標準仕様書」に基づいて各社が提案している機種を比較するため、あらゆる観点からベンチマークテストを行っている(以下敬称略)。

先生と子どもがともに育つ学校へ


豊福 晋平 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授


井田 晶也 インテル株式会社執行役員(パートナー事業本部本部長兼クライアントコンピューティング事業統括)

PCは、未来を一緒につくる人生のバディ
 井田 ご専門である教育工学の見地から、GIGAスクール構想でのPC配置の意義はどのようなところにあると思われますか。

 豊福 子どもにとっては生活のすべてが「学び」です。バーチャルとリアル、授業とそれ以外などと学びを分別せず、PCを「未来を一緒につくる、人生のバディ(親友)」として使えるように支援すること。子どもたちにはワクワクすることを見つけて探究し、この時代のフロンティアになってほしい。社会に参画し、彼らの生きる社会をつくっていく能力を育てることが、教育の目的になっていくはずです。

 井田 そのときPCが味方になりますね。

 豊福 そうです。ICT化で得る膨大な情報を、自己完結型の学習ではなく、他者や社会とのつながりからものごとを相対的に捉えて知的に活用することが重要です。文科省は標準仕様書で「クラウド利用をふまえた使い方」を提唱しています。先生と生徒、または生徒同士が情報を共有するコミュニケーションツールとして、端末性能に加えOS、アプリケーション、クラウド等のシステム環境も含めて考えるのがポイントです。CPUについて言えば、各メーカーのGIGAスクール推奨PCの比較では、インテル(R) Celeron(R)プロセッサーはG Suiteをはじめとしたアプリの起動時間が短く、総合的に見てもパフォーマンスが安定していました。搭載機種が豊富で、選択肢が多いのも利点。Chromebookは動作が軽快で、OSアップデートを繰り返すことによる動作の低速化もほぼなく、使いやすいですね。


豊福氏によるベンチマーク(https://gakko.site/wp/archives/1816)を元に作成

 井田 スムーズにインターネットにつながり、途切れない作業が授業では不可欠です。インテルはCPUだけでなくネットワークやメモリ、周辺機器との接続も含めPC周りのプラットフォームを提供することで、包括的な使い勝手の良さを追求しています。また、電源接続時とバッテリー駆動時とのパフォーマンスの差を極力なくすことを目指し、バッテリー駆動時も10時間以上使用可能な省電力性の向上にも取り組んできました。さらに、製品開発においてはGoogleやMicrosoftなどとも共同で行っているので親和性も高く、高いパフォーマンスを誇っています。「学びの場」を授業時間や教室を超えて幅広く捉え、軽さや低消費電力性、拡張性なども活かした多様な活用をしていただけると嬉しいですね。

 豊福 コロナ禍の休校中にオンラインで朝の会を実現できた学校では、多様な学び方があることに生徒や保護者が気づくきっかけになりました。先生方に訴えたいのは、一人ですべてを背負う必要はないということです。PCに強い生徒がいれば、授業や機器トラブルへの対応を手伝ってもらっても良いのです。

 井田 今後オンライン授業が普及すれば、学校の枠にはまらない個性を持つ子も、意欲さえあれば学び、進学できるようになるでしょう。さまざまな個性や才能が認められる学びの環境は、インテルの目指す「教育格差の解消」にもつながります。

教育に求められるのは「真正の問い」
 豊福 マシンが賢くなると人間は他の領域に頭を使えますが、どのように使うかが重要になります。1日のうち、授業で数分しかPCを使わない、というのでは意味がありません。家でも学校でもシームレスにPCを使用して使用時間を増やすことで、はじめてPCが持つ本来の教育的効果を引き出すことができると思います。また、今後先生方に求められるのは、目の前の課題を現実社会や自分の将来に結び付けて考えるための「真正の問い」を生徒に投げかけること。前編(https://www.kyoiku-press.com/post-221170/)で紹介されていた「Intel(R) Teachプログラム」はまさに、先生たちへの真正の問いの提起ですね。私も教育方法を講義するときにエッセンスを使っています。

 井田 それは嬉しいです。授業設計や指導評価に使える実践的なプログラムですが、共に学ぶ授業が実現できたとおっしゃる先生方も多いです。

 豊福 真正の問いに対して生徒が道筋を立て、ICTも駆使して考察し、答えを導き出す。先生は合間に手助けをする。これが新しい授業スタイルになっていくでしょう。

 井田 教務や校務のICT化によって先生方に余裕時間が生まれることも願っています。

 豊福 セキュリティの厳しさから自宅での仕事が難しく帰宅時間が遅くなっていると思いますが、クラウドを活用すれば仕事の場所を限定されません。大人が学ぶ姿は生徒の手本になりますから、先生方にはスペックの高い端末で知的作業できる環境をつくり、ICT時代のカッコいい大人のモデルになってほしい。大人と子どもが共に育つ学校にしていけたらいいですね。

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