日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

道徳教育における人物伝教材の研究 人は偉人を模倣する

14面記事

書評

渡邊 毅 著
多くの事例踏まえ有効性を説く

 本書は、著者自らが中学校教員として実践してきた道徳指導に基づき、現在の大学教員としての研究成果をまとめた報告書だ。そして、その結論は副題に示された「人は偉人を模倣する」である。
 本書は四章仕立てで、一章で人物伝教材の有効性・有用性を説く。歴史的にさかのぼり、具体的事例、人物を登場させての解説は説得力に富む。本書の約半分のページを割くだけあって、ゆるがせにできない章であり、自らの道徳教育を自問自答しながら読み進めるとよい。
 以下、二章は戦前の修身に登場する人物伝が紹介される。修身に対する偏見や思い込みが払拭されよう。三章では偉人に学んだ偉人たちの生き方事例の紹介だ。ヘレン・ケラーが塙保己一の生き方に学んでいた事例は胸を打つものがある。最終四章では人物伝教材を推進している実践校を紹介する。偉人を生んだ地域の学校での取り組み例に、うらやましささえ感じる。
 最後に評者の感動を記しておきたい。各章に登場する偉人たちの言行が「 」書き、もしくは改行して示されているのだが、これらを読むと目頭が熱くなるのを抑えることができなかった。「人物伝を使って、その具体的な生き方を通して価値を教え考えさせていくというのが、最も分かりやすく効果的な方法」という著者の主張に納得である。
(3300円 ナカニシヤ出版)
(八木 雅之・元公立小学校校長)

書評

連載