日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

「学びの旅」の価値を高める

10面記事

企画特集

竹内 秀一 (公財)日本修学旅行協会理事長

 現今のコロナ禍において、修学旅行を取り止めた教育委員会や学校が少なからずある一方、さまざまな工夫をして実施に踏み切った学校も多い。これまでも学校は、インフルエンザやノロウイルスといった感染症への備えを十分に行った上で修学旅行を実施してきた。今後も生徒の安全・安心の確保を第一に、旅行実施の際には「三密」状態をできる限り避けるなど、新型コロナウイルス対策を徹底していく必要があるが、併せて、これを機に「学びの旅」であるという修学旅行の基本に立ち返り、その在り方を見直してみるのもよいのではないか。
 その際には、新学習指導要領にいう「主体的・対話的で深い学び」を意識したい。「深い学び」とは「探究的な学び」に他ならない。高等学校に「○○探究」と名付けられた科目が新設されたのは、その表れであるといえる。当然、修学旅行にもその実践が求められる。
 ただし修学旅行では、多くの学校がその行程の中に、生徒自身がテーマを設定、訪問先やコースを決めて活動し、事後に成果を発表するという「探究」といってよい学びをすでに取り入れている。それをさらに深化させるには、例えば、学年全体が同じところに行き同じ活動をする、といった従来のかたちにとらわれず、クラス別やコース別など複数のコースに分かれる分散型方式をとることが考えられる。こうすることで大集団というスケールデメリットが回避され、訪問先の選択肢が増えて生徒の探究学習をより円滑に進めることができる。分散型には「密集」のリスクを減らす効果もある。
 はじめに旅行先ありきでなく、生徒が設定した課題を踏まえ、その解決に資することのできる活動形態や旅行先を考えていくことが「探究型」の修学旅行にとって必要なことではないか。また、修学旅行を単体の行事とせず、教科の学習や「総合的な探究(学習)の時間」などと緊密に連携させ、それらの学習の中から課題を見いだし、逆に修学旅行での成果をそれらの学習に生かしていくことも重要である。
 「平素と異なる生活環境」にある修学旅行で、リアルな体験を通して学ぶことの意義はバーチャルとは比較にならない。このかけがえのない学びの機会の価値をさらに高めていくことが、これからの修学旅行に何よりも大切であると考える。

企画特集

連載