情報化推進でフルクラウド化 日常的な活用目指す
11面記事埼玉・鴻巣市
埼玉県鴻巣市は8月26日、教育ICT基盤をクラウドサービスに全面移行すると発表した。本格稼働は来年4月1日からの予定だが、一部は本年度から先行実施する。同日開かれた原口和久市長の定例記者会見で明らかにした。
「本市が目指す姿は、子どもたちが日常的にICT機器を文房具のように使えるようになること」と原口市長。同時に、児童・生徒や教職員に専用端末を配布(児童・生徒約8500台、教職員約650台)。電子ドリル教材やコンテンツを充実させ、校内外で児童・生徒がICT機器を日常的に活用する環境を整備する。さらに、校務を完全電子化することで、教職員のワークライフバランス向上を目指す考えだ。
同市は昨年9月に「学校教育情報化推進計画」を策定。今回の教育ICT環境整備は同計画を踏まえてのもので、同市教委は特に先進的なポイントとして、
(1) 先端技術を活用したICT環境整備
(2) 学習形態の変革
(3) 子どもと向き合う時間の創出
―の3点を挙げる。
まず、(1)先端技術を活用したICT環境整備としては、市役所や学校においていたサーバー群を全クラウド環境に移行する。
同市は国立情報学研究所が構築・運用する学術情報ネットワーク「SINET」に加入する予定。SINETに直結したクラウドプラットフォーム(Microsoft Azure)を利用して校務系システムを構築することで、強固なセキュリティ環境を実現する考え。教育委員会がSINETを利用してMicrosoft Azureを活用する事例は全国で初めて。
次に、(2)学習形態の変革に関しては、電子ドリル教材やコンテンツを充実させ、「効率的かつ公正に個別最適化された学び」を実現するとしている。具体的には、児童・生徒に2―in―1のWindowsパソコンを配布し、1人1アカウントを付与。電子ドリル教材と教材コンテンツを合わせて導入する。電子ドリル教材はオフライン環境下での自宅学習も可能にすることで、ネットワーク環境が無い場合でも、専用端末を使って宿題などに取り組めるようにする。また、災害等による休校の場合には、各家庭のネットワークを使用してオンライン学習にも対応できるようにする。
最後に(3)子どもと向き合う時間の創出は、全教職員にセキュリティの高いテレワーク環境を整備し、ワークライフバランスの向上を目指す。埼玉県では初めて、校務を完全電子化し、教職員の負担軽減を図る考え。
具体的には、教職員に顔認証機能の付いた専用のノートPCを貸与。統合型校務支援システムを刷新し、成績処理・文書管理、出席簿、勤怠管理等の電子化を進める。中学校では採点支援システム(デジタル採点、成績分析・個票出力、答案等ペーパーレス返却など)を採用する。「教職員の負担軽減と児童生徒に向き合う時間の創出に寄与するシステムについても多数導入」するとしている。
原口市長は、急激な社会変化が進む中、「子どもたちが予測できない変化を前向きに受け止め、自らの可能性を発揮し、よりよい社会と人生のつくり手となる力を身に付けることが必要」と強調。そのためには「学校教育も変化していかなければならない」と語り、今後も教育情報化を推進していくとしている。