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東京・青ヶ島の学校から~日本一人口の少ない村の学校での取り組み~【第19回】

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4人の生徒に五つの部活動

 「ナイス、レシーブ」「ナイス、ファイト」。
 1プレーごとに、生徒がチームメイトとハイタッチを交わし、元気よく声を掛け合います。体育館には、活き活きとバレーボールをする生徒たちの姿があります。これは青ヶ島中学校で、学期に1回行われる「ゲームデイ」の様子です。バレーボール部の活動の1コマで、コートの一方は生徒4名と教員2名の混合チーム、もう一方は教員のみ6名のチームによる練習試合を行います。
 青ヶ島中学校は生徒数が4名ですが、2名が兼部しながら、体育系と文化系の5つの部活動が行われています。体育系のソフトテニス部とバレーボール部は、それぞれ部員が1名です。日頃の部活動の際には、教員も数名参加し一緒に練習を行っていますが、バレーボールのような団体競技で試合をする場合には、人数が容易に揃いません。試合自体の経験をすることの他にも、部活動を通した同年代の仲間との友情や信頼などの人間関係を構築する場面がとても少ないことが懸念されます。
 隣の八丈島の中学校との合同練習に参加するには、最低でも往復で2日かかる上、ヘリの交通費や宿泊費が必要となることから、時間的にも費用的にも容易に実施することが難しい環境にあります。
 そのような中で、「たとえ部員が少なくても、日々の練習の成果を生かす場を用意することで、部活動に熱中するという経験をさせたい」と熱く想う中学校教員により、この「ゲームデイ」は行われています。
 今年度は7月13日(月)の放課後に開催されました。他の部活動の生徒も参加するとともに、中学校教員の他に小学校教員もたくさん参加しました。
 バレーボール部の部員生徒が、参加する他の生徒や教員に対して、始めの挨拶と終わりのお礼をします。教員たちは、審判や得点係などを担いながら盛り上げます。
 「ゲームデイ」の意義について、バレーボール部の顧問を務め、今回の「ゲームデイ」を担当した三浦兼吾教諭は、次のように語ります。
 「中学生にとって部活動の存在はとても大きいと感じています。勉強以外のものに夢中になって取り組む経験は、今後の人生において必ず役に立てることができます。本来、部活動では同年代の仲間と活動をともにして、深い人間関係を学びますが、本校では部員数の制約上それができません。しかし、島民の方や他の教員が忙しい合間を見つけて、子ども達のために部活動に参加していただけることがあります」
 「例年の『ゲームデイ』は、多くの方々の協力のもとで、その活動が成り立ってきました。バレーボールの『試合』を通して、島民の方や教員と一緒にチームプレーを体験し、多くの方との関係を築く機会としています。部活動においては、同年代の仲間との絆を深めることも大切ですが、それ以上に、協力してくださる島民の方や教員のありがたさを感じることができるのも、青ヶ島ならではのとても良いところだと思います」
 「残念ながら今年度はコロナ禍ということもあり、島民の方の部活動や『ゲームデイ』への参加は制限されましたが、どの年代の方も分け隔て無く一緒に活動できることが、青ヶ島においての『ゲームデイ」の意義であると考えています。いずれまた、いつものように活動をともにして、青ヶ島を盛り上げていけることを期待しています」
 教員が懸命に努力し工夫を凝らしたとしても、青ヶ島では、子供たちにどうしても経験させられないことが出てきます。しかし、そのデメリットを感じるだけで終わらせないところが、青ヶ島の教育の良さだと感じます。
(木下和紀・青ヶ島小中学校 校長)

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