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教育実習の役割とこれからの教員に求められる資質能力

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特集 教員の知恵袋

 近年、教育現場では新しい教育方法や人工知能(AI)を用いた教育のデジタル化などが進んでいます。子どもたちの学びの場が進化するように、教育従事者である教員の成長も必要不可欠です。

 そこで、今回は教員の第一歩である教育実習と教員のグローバル化について解説します。子どもたちや保護者から求められている教員の必要な能力とはいったいどのようなものでしょうか。

教育実習のねらいと教員養成・免許制度の改革

 教育実習は、教職課程の一部として位置付けられており、幼稚園・小中学校教諭の免許状取得が目的の場合は4週間程度、高等学校教諭の免許状取得が目的の場合は2週間程度の実習を行います。この期間に教育現場を肌で感じながら教員への第一歩を踏み出します。

教育実習のねらい

 教育実習(学校体験活動)のねらいは、教育従事者としての愛情と使命感を深めることや、教員になるうえで必要な能力や適性を考え、課題を自覚することです。

 また、小学校・中学校・高等学校の教諭、幼稚園教諭に共通する一般目標では、大学で学んだ教科や教職に関する専門知識などを各教科や教科外活動の指導、保育で実践するための基礎を習得することが掲げられています。

 現場指導や保育を実践しながら、学級担任の役割や職務内容を理解したり、教科指導以外の活動で児童との適切な関わり方を学んだりすることも、実習を行ううえでの重要なねらいの一つです。

教員養成・免許制度の改革と概要

 子どもたちの教育が重要視されるなか、教員の養成や質的水準の向上も重要な課題です。

 平成18年7月、文部科学省の中央教育審議会により教職課程の質的水準の向上・教職大学院制度の創設・教員免許更新制の導入などの具体策が教員養成・免許制度の改革として示されました。

教職大学院制度の創設

 教職大学院制度の創設では、より高度な専門性を備えた教員の養成を目指します。

 教員免許更新制の導入によって免許状の有効期限を10年間に設け、更新要件である講習の受講を義務付けることで、時代に合った教員の資質能力の保持を目指すことが目的です。

教職課程の質的水準の向上

 教職課程の質的水準の向上では、教職実践演習の新設・必須化、指導能力や適性などに問題のある学生は実習に出さない、学生に対するきめ細かな指導や助言を充実させるなど、大学における組織的指導体制の整備が明記されています。

 平成22年度に導入された教職実践演習においては、学生に教員として最小限必要な資質能力が形成されたか確認するために行う授業です。

 教育実習で行う講義形式の実践に加え、ロールプレーイングやグループ討論、さらには学校や教育委員会と協力した実務実習やフィールドワークを取り入れることが期待されています。

学部と教職大学院における教育実習の意義

 教育実習には、大学の学部で行うものと教職大学院で行うものがあり、それぞれ別の意義があります。

 学部で行う教育実習の目的は、教員として最小限必要な資質能力を身に付けることです。一方、教職大学院で行う教育実習は単に学部段階の教育実習の延長というわけではなく、学校における課題に対して主体的に取り組める資質能力を培うことを目指しています。

教員に必要な資質能力と今注目されている教員のグローバル化

 教育実習では、最小限必要な資質能力を身に付けることが目的とされていますが、いったいどのような能力で、どのような効果が期待できるのでしょうか。

これからの教員に求められる資質能力

 社会の大きな変動に適用しながら学校教育に対する期待に応えるためには、教育者としての使命感や教育的愛情、実践的指導力といった資質能力が必要です。

 そして、いつの時代にも求められる資質能力と並行して、豊かな人間性や社会変化に適応するための知識・技術なども求められます。また、基礎的な資質能力の確保はもちろん、得意分野を持つことや個性の伸長、専門性の向上を図る姿勢など、学びの精神が重要です。

教員のグローバル化を目指す「トビタテ!教員プロジェクト」

 経済社会のグローバル化や令和2年からの新学習指導要領における小学校外国語教育の早期化・教科化、そして増大する外国人児童・生徒への対応を踏まえ、平成29年8月に文部科学省が立ち上げたのが「トビタテ!教員プロジェクト」です。

 このプロジェクトより、文部科学大臣が認定した在外教育施設(※1)における教育実習を行うことが可能になるだけではなく、豊富な外国語活動や現地校との交流活動によってグローバルな視点や考え方を身に付けることが期待できます。

 国際化が進む社会において、子どもたちがグローバルな視点を持てるよう教育することはもちろん大切ですが、指導する立場にある教員自身がグローバルな考え方を身に付ける機会も、今後さらに重視すべき取組といえます。

※1… 在外教育施設とは、日本の学校教育法に準拠し、教育を実施する海外の教育施設のことです。海外に在住している日本の子どもたちを対象にしており、日本人学校や補習授業校、私立在外教育施設があげられます。

次世代の教員育成につながる教育実習

 教育実習は、学部生と大学院生、教員免許状の有無によってその意義が異なるため、単に教員免許状の取得に必要な単位というわけではありません。

 特に、現職教員学生においては、現職経験から得た課題の解決策や実施計画の検証を行う機会として、計画された実習にすることが重要です。学習指導要領の改定や教員のグローバル化など、時代の流れに合わせながら変化する教育実習は、教員に求められる資質能力を持つ、「次世代の教員を育成する」という大きな役割を果たしています。

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