区内全小中学校の体育館に大型扇風機を4台ずつ導入 熱中症対策や新型コロナの感染予防にも
17面記事体育館に配備された4台の大型扇風機(足立区立弥生小学校)
東京都・足立区教育委員会
学校の管理下における熱中症事故のほとんどは体育・スポーツ活動中に起きているが、なかでも熱のこもりやすい体育館は注意が必要だ。こうしたなか、足立区教育委員会では、小中学校の体育館に1校あたり4台(全104校)の大型扇風機を導入した。そこで、教育委員会の担当者に導入のねらいや活用状況について聞いた。
熱のこもりやすい体育館の熱中症予防に
大型扇風機は、学校施設を安全かつ衛生的に整備し、児童生徒が学びに集中できる環境を確保することを目的とした「公立小中学校の教育環境向上(小中学校施設の保全事業等)」の一つとして予算化され、昨年の夏前までに各校に導入された。
「普通教室のエアコン整備が済んだあとで、次のステップとして体育館の猛暑対策の声が上がったことがきっかけです。主な用途は部活動中などの熱中症予防になりますが、4台使って四方から風を送ることで、風通しのよくない夏場の体育館のような室内でも効率よく換気が行えます。また、災害時に避難所利用する際も、地域住民の快適性が向上できると期待しています」と担当者は語る。
そんな大型扇風機には、直径1mのアルミ羽根3枚を備え、直進性のある強力風を広範囲に送風できるなど、教育委員会が示した風量等の条件をクリアした、ナカトミ製のビッグファンを採用した。「なかでも決め手になったのは、全校にこれだけ多くの台数を一斉に供給できる体制。そして、各校への配送にも対応してもらえることでした」と振り返る。
本製品は、単相100Vで既存のコンセントが使えるため電気工事が不要なほか、上下に風向も調整できるのが特長。しかも、モーターが異常発熱すると自動的に停止する「サーマルプロテクター」(復帰式過熱保護装置)を内蔵し、安全面にも配慮されている。
コロナ禍での換気対策にも役立つ
導入後は、各校の校長から熱中症対策として助かっているとの声が届いているとともに、今年に入ってからは新型コロナウイルスの感染を防止する密閉空間での換気対策としても役立っているという。「分散登校では体育館で授業を行ったクラスもあったことや、先日の都知事選の投票でも換気対策に利用しました。さらに、キャスターが付いて移動が可能なため、教室の廊下などに持ち込んで定期的に送風し、校内の風通しを良くすることなどにも活用したそうです」と話し、導入当初には想定しなかった使い方も行われているようだ。
なお、体育館のエアコン設置についても、過去2カ年度にわたるモデル校での設置・検証を経て、全小中学校に8月中に設置する工事を進めている。「エアコンが設置されても体育館のような広いスペースは全体が冷えるまでは時間がかかります。その意味でも、大型扇風機を併用して空気を循環させ、冷房効率を高める手段として活用してほしいですね」と期待した。