長寿命化計画の先進事 コスト縮減につながる効率化の実現に向けて
16面記事学校施設の長寿命化計画の策定には、点検・診断→計画の策定→対策の実施というメンテナンスサイクルを構築する必要がある。したがって、他の公共施設との複合化を図ったり、PFI事業者に管理を委託したりするなどして施設管理の効率化を図る自治体も多く存在する。これらはコストの縮減にとどまらず、学習・生活環境の質の向上や、地域コミュニティや防災拠点としての機能強化等にも寄与するからだ。ここでは、そんな自治体における先進事例を紹介する。
「複合化」
京都のシンボルロード・御池通に面する京都市立京都御池中学校は、市内でも有数の立地であることから、敷地の有効活用を求めて保育所、老人福祉施設、行政オフィスと複合化(地上7階地下1階)。PFI事業者による施設全体の管理を実施し、民間店舗も併設した。従来の整備手法と比べ、施設整備費及び維持管理費が30%削減され、一定の財政効果があった。
品川区立第一日野小学校は、中学校の移転に伴い跡地に小学校を改築。図書館、音楽ホール、プラネタリウム等と複合化し、授業や発表会で相互利用するなど交流活動も盛んに。また、施設の維持管理は一括して民間管理業者に委託し、効率化を図った。
「共有化」
山形県・西川町立西川小学校は、過疎、少子化により5つの小学校を1校に統合。学校図書館の機能を充実させ、地域の図書館としても活用している。学校敷地内には約100台分の駐車場を確保し、図書室に地域住民専用の入口を設置している。
「小中一貫」
杉並区立杉並和泉学園は、児童生徒数がピーク時の半分以下に減少した状況を踏まえ、小中一貫教育校を創設。もともと隣接していた小中学校の敷地を活用し、中学校校舎を残したまま小学校校舎を改築して一体化した。中学校校舎については既存建物を改修して使用することにより、改築に比べて整備費用を縮減することができたほか、一体の職員室で合同の会議等を行うことにより、小中学校の教員間の相互理解、協働関係の強化がなされている。
長野県信濃町立信濃小中学校は、町内にあった5つの小学校、1つの中学校を統合して、小中一貫校とすることにより、少子化への対応、学校施設の老朽化対策、教育環境の質の向上を同時に図った。既存中学校の敷地を活用し、体育館については既存のものを耐震補強して使用することで、事業費の縮減を実現した。
施設の維持管理の効率化
目黒区立碑小学校は、教育委員会と行政部門が連携した複合化で施設の維持管理を一体化した。ビル管理の資格を有する業務受託者がプールの管理と学校施設全体の保守点検業務も併せて行っており、学校施設での設備の不具合等に迅速に対応している。
調布府立調和小学校は、閉校となる小学校跡の有効活用について、地域住民や学校関係者等のメンバーが中心となり検討。設立を進めていた総合型地域スポーツクラブに吸収する形で生まれ変わった。学校、体育館、プール、図書館含めて一体的な施設管理をPFI事業者が実施し、体育館、校庭の運営をNPOが行っている。
初期投資の平準化
栃木県宇都宮市は、リース方式により小中学校(小65校、中24校)の普通教室等の空調設備を一斉導入した。これにより、初期投資額の抑制と中長期における投資額の平準化を図った。
既存建物の活用例
東京都江東区は、廃校となった小学校を近隣する学校の改修時の仮校舎として活用した。仮設プレハブ校舎を設置する場合と比較して、経費削減面で有利であり、工事期間中の教育環境の提供の面でも大きなメリットがあった。