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寄稿 コロナ問題の渦中に身を置く子どもたちの心的ストレス

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論説・コラム

 本紙の5月25日付で、新型コロナウイルス感染症に伴う欧州5カ国の学校の状況についてリポートしたフリーライターの島崎由美子さん(写真)から、「コロナ問題の渦中に身を置く子どもたちの心的ストレス~学校現場での早期発見・早期対応の重要性~」と題する論考が届いた。医師の八巻孝之さんが監修したもので、生活の変化により、子どもたちは自分の心の不調に気づきにくくなっていること、この問題への対応の重要性を訴えている。

 新型コロナウイルス感染拡大の長期化に伴い、私たちの心理状態は日々変化しています。すべての小・中学校や高校などに対して政府が3月から休校要請を出した直後、医療関係者への相談はそれほど増えませんでしたが、3月下旬の連休頃から明らかに子どもたちの心的ストレスに関する相談が増え始めました。
 私たちは、緊張状態が続くと自律神経が乱れ、だるさ、頭痛、めまい、不眠といった症状が生じ易くなります。私が心配している事は、コロナ問題が終焉して通常登校に戻っても、子どもたちが以前のように元気に学校生活を過ごせるかということです。
 東日本大震災では、多くの人が、頭が重い、体が揺れるといった感覚を経験しました。当時の状況が繰り返し報道され、家でテレビ番組を観る機会の多い人に、不安や抑うつ症状を訴える人が増えたことも話題になりました。
 実際に被害に遭わなくても、あたかも自分の身に起こったかのようなリアルな体験が繰り返し生じていたものと考えられます。つまり、多くの人が自分事としてこの震災を捉えていたことがわかります。長期化したコロナ問題も全く同様だと考えています。当初は「本日の感染者は○名」といった匿名性の高い報道で、疑似体験するような具体的な情報に乏しく、報道を客観的に見ているところがありました。
 一方で、心配だからと外出を控えたり、隣に座る人の咳に怯えたりと、ちょっとした不安や緊張が続き、長期化した不安やストレスが蓄積しているはずです。日を追うごとに深刻さを増して学校休校となり、多くの子どもたちの日常に大きな影響を及ぼしましたが、志村けんさんのような有名な方が亡くなったことで、子どもたちは誰もがこの問題を自分事と感じるようになったはずです。
 私たちには、朝起きて、朝食を摂り、電車に乗って会社に行くといった日常のルーティーンがあります。ところが、今はルーティーンを変えざるを得ない状況です。1週間以上いつもと違う生活を送ってまた元の生活に戻るとすればそれなりに負荷がかかります。
 例えば、病気やケガで休んだあとに復帰するときと同じです。特に自粛解除後の子どもたちは、これまでの遅れを取り戻そうと気持ちの面でも「頑張らなくてはならない」「みんなで乗り越えていこう」という雰囲気が生じやすくなっています。
 そうした雰囲気の中では自分の不調のサインに気付きにくく、ついつい見過ごしてしまうことが増えがちです。
 気づいたころにはかなりの体調不良を抱えている場合も少なくありません。解除からの復帰で特に難しい部分が精神面の問題であり、子どもたちがルーティーンを取り戻すことはとても重要ですが、しばらくは日常と非日常が交差する日々が続くことでしょう。クライシス・ケア(災害、事故等の緊急心理支援)のような、コロナ問題の心理的ストレスに関する相談が、その内容を変容させながら増えていくと考えられます。
 学校現場では、これまで気付きにくかった不安やストレスへの反応から、学校生活での相互理解や対人関係が普段どおり上手くいかず、時にイライラが高じてトラブルに発展するなど、加速度的に変化していくことが心配されます。
 コロナ問題の発生初期(1月~3月)、緊急事態宣言が出されていた自粛期間(4月~5月)、そして解除後の現在(6月~)において、心的変化と共に相談の内容も変容していくことでしょう。各時期に応じた対応が求められます。
 解除以降は、各地域による状況の違いもあり、子どもたち個々の置かれている状況の格差が拡大していくことが想定され、教育現場ではさらに多様な対応が求められると考えています。“先が見えない”、“複雑かつ継続的な不安”においては、不安や困りごとを感じた時にすぐ、気軽にワンタイムで相談できる学校現場の創意と実効力が期待されることでしょう。
 子どもたち自身によるセルフケアや、教員など関係者による不調予防、早期発見・早期対応が重要となります。保育園や学校の関係者は、子どもたちの心的ストレスのプロセスを熟知して、早期に発見、早期に対応できるような体制と雰囲気を作ることが重要です。
 子どもたちには、次のようなメッセージを送ります。
 「つらい思いは信頼する人に話そう、しっかりと食事と睡眠をとろう、自分を責めないで、しっかりと食べて少しずつ体を動かしよく眠ろう」。

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