東京・青ヶ島の学校から ~日本一人口の少ない村の学校での取り組み~【第12回】
NEWSピアノ発表会
臨時休業が始まる前のことです。軽やかなピアノのメロディ、そして大きな拍手が音楽室に響き渡りました。2月2日(土)午後、青ヶ島小中学校の音楽室で、「青ヶ島小中学校ピアノ教室」の発表会が行われました。
演奏者は、小学校2年生から中学校2年生までの5人と中学校音楽科教員です。児童・生徒は、前年5月からそれぞれが取り組んできた個人曲と音楽科教員との連弾の演奏曲の2曲を披露しました。
観客は、地域の方々、保護者、教員等で約30人。音楽室は、満員の観客で熱気に包まれていました。発表前は緊張の面持ちの児童・生徒たちでしたが、発表が終わると笑顔がこぼれて、ほっとした、にこやかな表情になっていました。
青ヶ島小中学校のピアノ教室は、児童・生徒の中の希望者を対象に、学校主催の文化部的な活動の一つとして土曜日の授業がない日の午前中に行われています。
指導は、中学校の音楽科教員が行います。このピアノ教室は、いつごろから始まったのかは記録にありませんが、数十年間は続いているそうです。島に和太鼓教室はありますが、公共用のピアノがあるのは学校だけで、内地における音楽教室のように音楽や太鼓以外の楽器を学ぶ場所はありません。
そのため、このピアノ教室は、島の子供たちにとって数少ない習い事のできる貴重な機会です。ピアノ教室の最年長の中学2年生は、小学校1年生のころからピアノ教室に通っています。
この日は、「タランテラ」と「アベ・マリア」を見事に演奏しました。
保護者の1人は、その心情を「子供たちの成長には、ピアノ教室のような場が必要だと思います。現在の青ヶ島には、音楽など文化的な社会教育の指導者がいないため、子供たちが学校以外で学べる場はあまりありません。内地のようにいろいろと習い事はできないため、島内の限られた中でもできることはすべて習わせて、内地に行ったときに選べるようにしてあげたいと思います」と打ち明けてくれました。
音楽科教員の杉野麻衣教諭は「ピアノ教室で指導していると、子供たちの成長に係る学校の役割の大きさを実感します。今後も子供たちに音楽のすばらしさを感じてもらい、生涯を通じて音楽を楽しめるようになってくれたらと思います」と語ります。青ヶ島小中学校ピアノ教室の存在意義の重要性を改めて強く感じます。
(写真はピアノを演奏する青ヶ島の生徒)