日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

大久保俊輝の「休み中に考えたい学校問題」【第66回】

NEWS

心の距離を縮めるチャンスに

 医療従事者間の温度差は激しい。命懸けもあれば、知らぬふりもある。教育も同じで温度差は隠せない。
 分断の動きが国家間で起きて、今は人間間で距離を保つように求められている。だからこそ、心の距離を近づけるチャンスでもある。不思議なのは、家族間の距離や友達間の距離は制限されていないように思える。そのうちひとりでも感染すれば、事態は様変わりする。この時になって、人は人の中で生きてきたことを痛感させられる。

 家業の薬膳料理店で存続の為、近隣の為にと自ら申し出て弁当の配達を始めた。当初は5個以上でお願いしていたが、配達していると実情が見えてきた。明日からは1個でも配達しなければならないと痛感した。
 それは何気ない会話からであった。「1つじゃ難しいかもね」との呟きだ。寝たきりで外に出られない娘を持ち、足の悪い姉の事を考えての事であった。近くても来られない事情は様々にある。

 弁当を配達する事で、初めて知れたことはあまりに多い。「お弁当お持ちしました」「悪いわね。少なくて」と、話されるおばちゃんに会うたびに、保健師として養護教諭としてこの店の料理を考案し、高齢者の為にと願って91歳で旅立った亡き母に会えたようでとても幸せな思いにさせて頂いている。出来ることはまだまだある。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

大久保俊輝の「休み中に考えたい学校問題」