学校の「当たり前」をやめてはいけない!現場から疑う教育改革
16面記事諏訪 哲二 著
人材養成より人間形成が重要と説く
直球批判が本になるとは思わなかった。それも「あの名門中学校長にもの申す!」と帯を付けているから、よほどの思いを形にしたのであろう。こうした論議を双方の本から第三者的に読み取るのは実に面白いものである。
今や飛ぶ鳥を落とす勢いで「学校の『当たり前』をやめた。」の著者である工藤勇一氏への徹底した批判を根拠立てて説明している。読んでいるうちに相互の経験や人生観や教育観の違いとともに、仮に同時代に2人が過ごしていたら、さらに熱を帯びていたことだろうと思えてならない。私はやや工藤氏寄りではあるが、諏訪氏の主張にも積み上げられた学校文化という視点から納得できる箇所がある。
ひとは世界や社会を構成している部分ではなく、それ自体ひとつの宇宙(世界)であることが分かっていない。子どもが社会で「自律」するという観念はあるが、子どもが社会で「自立」するという視点は欠落しているように見える。長いこと続いてきた「人間形成」重視を時代遅れのものと見なし、「人材養成」に重点を置く学校運営に大きく転換しようとしている。と自説から後輩を手厳しく鍛えているようにも思える。
この2人に私も加えていただき、存分に論議したい。探究的な学びを仕掛けるならば、教師自身が公開の場で論議することがあってもよいからである。工藤氏がいわゆる困難校での実践であったなら論調は違っていただろう。
(1870円 現代書館)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)