生徒指導~小学校段階での考え方~【第164回】
NEWS職人仕事から学べること
見えていない事実が世の中には沢山ある。災害が起きると自衛隊、警察官、消防士がテレビに映るが、それは初期段階に過ぎない。復興の仕上げまでの長い期間は業者に委ねられる。しかし、その業者の苦労や想いは利益を得るためとして、かなり献身的であっても美談とはされない不思議がある。
我が国の職人仕事は、後継者のいないなか世界最高水準の技師力とそれを支えるポリシーが辛うじて残る。
しかし、業界は汗や泥にまみれる為か、キャリア教育でも光が当てられていない。危険性が感じられるからか、工事現場の高い塀の中で何が行われているかも伺い知れないようになっていて、気付くといつの間にか出来上がっている為、顔が見えず感謝の言葉さえ伝えられない。こうした分野の経験者が教育界にはほとんど存在しない為、近くにありながらも、教育ともっとも疎遠な分野になっている。
しかし、教育効果は高い。校舎内外や近隣に工事現場があると、キャリア教育や総合的な学習の生きた教材になると考え、必ず教材化したものである。その中で生徒指導に関連する内容を実践的に学ぶことが多く出来た。
日焼けした監督が、「今の日本には、安いものへ、安いものへという考えが蔓延している。安心安全を得るには、安い早いでは出来ない『事』や『物』がある。必ず安心安全と反比例になる」と5・6年生に話された事を鮮明に思い出す。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)