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大久保俊輝の「休み中に考えたい学校問題」【第29回】

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「深く聴く」は難しい

 すごいね。驚いた。さすが。頭文字を取ってSOSになる。それ以外は話さない営業方法と、礼はつむじを見せ続ける仕方を聞いた。
 この2種のスキルは教師には大変有効であると感じた。誉め上手とは言葉を含めた態度にあるが、言葉ほど威力のあるものはない。ある意味、口先だけと分かっていても乗せられてしまうものである。

 自分が話すよりも、ともかく相手を称賛し、聞き出す方に力点を置かないと、話したことが誤解を深め逆効果になりかねない。よかれと思って話しても、相手の心は遠ざかっていく事になる。
 こうした失策を私は何度も繰り返してきた。「深く聴く」とは、それほど難しいのである。自制は勿論のこと、数倍意識して臨まないと深くは聞けてはいないのである。

 私はLGBTの学生からカミングアウトされたり、保護者や地域の方から、かなり困難な相談を受けたりする事がある。
 中には「待望の妊娠はしたが、検査で障害がわかった。産むべきか」などの相談もある。
 困難な判断は自分自身の価値観が試される事になる。また、こうした相談には責任が伴うため、その後も忘れることなく見届けねばならなくなる。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

大久保俊輝の「休み中に考えたい学校問題」