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漂流児童 福祉施設の最前線をゆく

17面記事

書評

石井 光太 著
レールから外れた子の過酷な現実

 最前線のノンフィクションは、説得力がこれほど違うものかと痛感した。それも福祉施設の現状は社会の縮図であり、影響力のある政治家や経済人そして教育者は、即、本書を取り寄せ、熟読し、行動に移さねば間に合わない危機感を私は感じた。
 レールから外れ落ちた者たちは、いつの間にか見えなくなってしまう。そこに福祉施設があり、命からがらやっとたどり着く者がいる。その現実は見てなかった。見えていなかった。見ようと努めてこなかった自分を恥ずかしく感じた。

 ・児童相談所に寄せられる虐待相談件数年間約13万件
 ・国内のシングルマザーの数約120万人
 ・ひとり親家庭の2組に1組、子どもの6人に1人が貧困
 ・小・中学校を長期間欠席している児童・生徒、約20万人
 ・通常学級の児童・生徒の15人に1人が発達障害(取材当時の数値)

 この実態こそが、まさに日本の未来に対する警告なのである。これは私たち大人が生み出した、よって解決に向けて対処せねばならない責務がある。
 構成は5章、「子供の救出」「マイノリティー」「非行少年」「貧困と教育」「命の現場」―と分かれているが、正直ここまで来ているのかと、自分の安定ボケを恥ずかしく感じた。子どもの貧困についても実感できていない者が私の周りにも多く存在する。桜を見ている場合でも、あら探しをしている時でもない。照準は子どもへ未来へ合わせなければならない。
(1870円 潮出版社)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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