東京・青ヶ島の学校から ~日本一人口の少ない村の学校での取り組み~【第10回】
NEWSJAMSTECでの学習
学びのプロセス意識し「海」を学ぶ
今年度青ヶ島中学校では、「主体的・対話的で深い学び」の実現と、探究的な学習の充実を図るために、「海洋教育パイオニアスクールプログラム」<主催=(公財)日本財団・東京大学海洋教育研究センター・(公財)笹川平和財団海洋政策研究所>の指定を受け、海洋教育を実施しました。
1・2年生の総合的な学習の時間の柱の一つとして、1学期の移動教室から2学期の学習発表会までの全体の流れを整理し、新たな指導計画を立てました。その目的は、生徒が最初に設定したテーマを調べまとめるだけで終わるのではなく、学習活動を通して生まれた新たな疑問を分析し、そこからさらに調べをすすめて課題を解決するという、学びのプロセスを意識したものにすることにありました。
生徒の疑問の解決のために、課題に関係する島民の方へのインタビューを取り入れるなど、対話を意識した調査活動も充実させて、深い学びの実現を目指しました。
絶海の孤島であり、島への出入りが不便な青ヶ島において、島外に出て学習を行うことができる移動教室は、島内では経験できない様々なことを学ぶ貴重な機会です。しかし、多くの学びを生徒につかませたいという思いが強くなりがちとなるため、これまでは、あれもこれもといろいろな活動を取り入れてしまい、移動教室全体としてのつながりや関連性が少ない学習活動の集まりになっていました。
そこで、今年度は「青ヶ島と海」という学習テーマを柱とし、例年と同じように多くの活動を取り入れながらも、それぞれの学習に系統性をもたせるように工夫しました。
5月の移動教室の際は、東京海洋大学や海洋研究開発機構(JAMSTEC)といった研究機関を訪問し最先端の研究のお話や各個人の学習テーマにおいて浮かび上がった疑問に回答していただいたり、大森海苔のふるさと館を訪問し遠浅の干潟の海岸と海苔養殖について学んだりすることができました。
帰島後、移動教室での学習内容を整理してまとめ、7月の宿泊行事報告会で発表を行いました。新たな発見や感動、楽しかった思い出など、内地で学んできたことを振り返り、今年度の移動教室も多くの収穫が得られたと感じました。
例年はこの宿泊行事報告会で一区切りでしたが、今年度はこれまでの学習を踏まえ、新たな疑問や分からなかったことを再整理し、個人の学習計画の見直しを行いました。
当初計画したものから、修正が必要になった生徒もいましたが、11月の学習発表会に向けて、設定した学習課題の解決を進めました。「青ヶ島と海」がテーマの調べ学習ですので、島民の方へインタビューして、近くで海に携わっている実感のこもった言葉で疑問に答えていただき、インターネットや書籍で調べることとはまた違った学びを得ていたように感じました。
学習発表会での発表
学習発表会の際、2年生は、録画していたインタビューを編集してプレゼンテーションに組み込む工夫を行い、発表を見ている方々にもインタビューで発言していた方の思いが伝わるようにしました。
探究的な学習として、もっと深めることができると感じる部分もありましたが、「海を通してふるさと青ヶ島を見つめる」海洋教育を柱として学習活動を見直したことにより、大きな学習成果が得られました。この成果を次年度にも生かし、一層充実した探究的な学習となるように、今後も計画の見直しを行っていきたいと考えています。
(池田和幸・青ヶ島中学校副校長)