日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

みらいの教育 学校現場をブラックからワクワクへ変える

17面記事

書評

内田 良・苫野 一徳 著
教職の「特殊性」見直しの提起

 先の臨時国会で「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」、いわゆる給特法の一部改正案が成立した。成立前に刊行した本書が求めたのは、過労死ラインを超える時間外勤務の現状を教職調整額で済まさず、相応の残業代を粘り強く獲得していくこと、当たり前に営まれている教育の日常に疑問を投げ掛け、見直すことであった。
 長年組合活動に関わった聞き手を間に、教育の問題点を数字で示していく教育社会学者と、教育の大本を「市民社会における<自由の相互承認>」の実質化にあるという教育哲学者との対談、論文、給特法に関わる資料を加えて一冊にまとめてある。
 教育社会学者が発信した“ブラック残業”を象徴する「定額働かせ放題」が改正給特法でどう変化するのか、今後、注視が必要だろう。
 同時に、教員の仕事は<特殊性>を有するのか、という本書の提起は、当事者はもちろん、教育に関わる全ての人がいま一度、吟味する必要があるのではないか。
 給特法第1条にある「教育職員の職務と勤務態様の特殊性」。それぞれの仕事観や教育観が混じり合いながら、容易に共通理解が得られない事柄ではあろう。それぞれが本音をぶつけ合うことから、教育の今後を語ることを、本書は仕掛けているのかもしれない。
(1650円 武久出版)
(矢)

書評

連載