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生徒指導~小学校段階での考え方~【第86回】

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心の糸は切れない

 気が弱く、機転が利いて、小利口だと、ついついその場しのぎで嘘をつく。うまくいくと、味を覚えて次々に放言し始める。「嘘も方便」は人間関係をスムーズに済ませるために行う時もある。しかし、我田引水のために嘘を並べる醜さは人相をも変え、心を歪め、人心をなくしてしまうから恐ろしい。

 電車内や店で財布をなくしても、ほとんどの場合、日本では本人に戻る。すなわちそうした規範が国民に根付いているのである。
 しかし、災害現場での略奪や、あおり運転など不埒な輩は存在する。くもの糸の細さに、カンダタは自分だけ助かりたいと思って結局、糸が切れてか切られてか、地獄へと落ちていく。なぜ切れたのか。欲の重さからではなかったか。

 心の糸ならば何千人がつかんでも切れることはない。生徒指導は、故事にたとえて人の道を教えつないできた。それは情景と重なりいつでも脳裏に鮮明に蘇る。
 先日、はがきが届いた。娘が定時制高校へ進み、必死にノートを取る姿に胸が一杯になり、先生の言葉を思い出したとつづられていた。そして、「20年30年先に幸せになっていればいい」のアドバイスに救われ今がありますと。振り返ると何気ない人生指導だったのかもしれない。
(おおくぼ・としき 千葉県内で公立小学校の教諭、教頭、校長を経て定年退職。再任用で新任校長育成担当。元千葉県教委任用室長、元主席指導主事)

生徒指導~小学校段階での考え方~