東京・青ヶ島の学校から~日本一人口の少ない村の学校での取り組み~【第7回】
NEWS児童・生徒が自ら考えるための保健指導
「私は、立ち上がれたから大丈夫だな。」
児童・生徒が、休み時間に保健室前で掲示物を見ながら、壁際に置いてある椅子から立ち上がれるかを試しています。壁の掲示物には、養護教諭が作成した、猫背かどうかのチェック方法が書いてあり、そのチェックのために椅子が置いてあります。その隣には、縦横に線の入っている姿見が置いてあります。これも姿勢の状況を確認するために使います。今月の保健目標は「よい姿勢をする」であり、そのための仕掛けがこの掲示物と椅子と姿見です。
青ヶ島小中学校では、毎月の保健目標に合わせて、養護教諭が、児童・生徒自らが体験し、目標を意識できるような掲示物や仕掛けを用意しています。
例えば、6月の保健目標が「歯を大切にする」であれば、歯ブラシと計りを置いて、歯を磨くのに丁度よい200gの力を実感できるようにしたり、7月の保健目標が「夏を健康に過ごす」であれば、清涼飲料水などの飲み物に含まれる砂糖の量を実物で確認できるようにしたりしています。
児童・生徒には、月初めに保健目標の説明があり、それを受けて自分の場合はどうなのかと、掲示物や仕掛けを使って自分の生活を見つめ直すことができます。
青ヶ島には、高等学校がありません。そのため、中学校卒業後は進学のために島から出ていくことになります。小中学校の教育目標は「自立」であり、中学校卒業後には文字通り自立して生活できることを目指して指導を行います。
自立を目指す上で、生活面に大きく関わってくる保健指導は特に重要になります。
保健指導を担当する徳永千夏主任養護教諭は「青ヶ島小中学校の子供たちの卒業後のことを考えると、生活面での自立はとても重要です。そのためにも、自分で考えて生活習慣や健康面を整えていく力が必要になります。しかし、自らの生活習慣の課題を把握していても、実際に行動に移すのは大人の私たちであっても難しいものです。すぐには児童・生徒の行動改善に結びつかなくても、見たり触ったりして実際に体感できる掲示をし、記憶に残る指導を繰り返し行うことにより、少しでも普段の生活への定着につなげられたらと考えています。保健指導において、どのようにすれば体験的に学ぶことができるのか、どのようにすれば子供たちが自ら考える仕掛けができるのかを考えながら、健康に関する種をまき続けていきたい。」と語ります。
中学校卒業後の自立を目指した指導は、教員の絶え間ない工夫と努力、そして子供たちに対する愛情で成り立っていることを強く感じます。