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SDGsで掲げる持続可能な開発目標、実現の鍵は質の高い教育に?

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特集 教員の知恵袋

 「SDGs」という言葉が政府や経済界などさまざまなところで取り上げられるようになってきました。持続可能な開発目標を意味する言葉で、2030年に世界各国が達成すべき17の目標が並んでいます。これらを達成するには質の高い教育が必要で、日本でもさまざまな取り組みがスタートしています。

国連サミットで採択、17の目標を設定

 SDGsは「Sustainable Development Goals」の略で、2015年の国連サミットで採択された持続可能な開発目標です。2016年から2030年までに達成すべき17の目標で構成され、世界中の誰一人として取り残さずに多様性と包摂性のある社会の実現を目指しています。推進には先進国、途上国を問わず世界中の国々が当たることになっています。

・貧困や飢餓のない世界へ各国がスクラム

 国際連合広報センターによると、世界中には1日1ドル90セント未満という国際貧困ライン未満の労働者が世界人口の9.2%近くおり、飢餓にあえぐ人は約8億人に達しています。

 戦争はなくならず、各地で環境破壊が起きて地球温暖化という大きな気候変動にも直面しています。人類が将来も地球で豊かに暮らしていくために、解決しなければならない問題が山積しているといえるでしょう。SDGsはこれらを世界中の国がスクラムを組んで解決しようとしているのです。

・SDGsの17目標とターゲット、指標について

 SDGsは大きく分けて、「目標」、「ターゲット」、「指標」の構成で成り立っています。SDGsが打ち出す17の目標は以下のとおりです。

 (1)貧困をなくそう
 (2)飢餓をゼロに
 (3)すべての人に健康と福祉を
 (4)質の高い教育をみんなに
 (5)ジェンダー平等を実現しよう
 (6)安全な水とトイレを世界中に
 (7)エネルギーをみんなにそしてクリーンに
 (8)働きがいも経済成長も
 (9)産業と技術革新の基盤をつくろう
 (10)人や国の不平等をなくそう
 (11)住み続けられるまちづくりを
 (12)つくる責任つかう責任
 (13)気候変動に具体的な対策を
 (14)海の豊かさを守ろう
 (15)陸の豊かさも守ろう
 (16)平和と公正をすべての人に
 (17)パートナーシップで目標を達成しよう

 17の目標の下に「極度の貧困を2030年までに終わらせる」、「飢餓の撲滅と栄養のある食料の確保」などそれぞれ10前後のターゲットが設定されており、目標のターゲット総数は169あります。

 さらにその下には「国際的な貧困ラインを下回って生活している人の割合」など重複分を除いて232の指標が設定されています。

質の高い教育の必要性を強調

 SDGsの目標4には「質の高い教育をみんなに」が設定され、「2030年までに全ての子どもが無償かつ公正で質の高い初等、中等教育を修了できるようにする」といった10のターゲットが設けられました。

 ここで強調されているのは質の高い教育です。質の高い教育を受けることで貧困など多くの課題を克服できると考えられています。

・読解力習得で1億7000万人以上が貧困脱出

 質の高い教育を受けることで子どもたちは賢くなり、それぞれの可能性を広げることができます。

 潘基文前国連事務総長が世界市民を育成するために設立したグローバル・エデュケーション・ファースト・イニシアチブは、低所得国の全ての学生が基本的な読解力を身に付けて卒業すれば1億7100万人が貧困から抜け出せ、全ての女性が中等教育を受けていれば子どもの死亡が49%減ると試算しました。

 ユネスコは持続可能な開発のための教育として、ESDを提唱しています。人類が将来も恵み豊かな生活をできるよう現代社会のさまざまな問題を自らの問題として取り組む教育内容です。

・学校へ通えない子どもは世界に6,100万人

 日本では小・中学校9年間の義務教育があり、誰もが学校に通っています。しかし、途上国はそうではありません。世界中で小学校に通えない子どもは6,100万人と推計され、15歳以上で読み書きできない人が8億人近くいます。

 途上国は経済発展を急ぐあまり、教育施設の整備が後回しにされることが珍しくありません。質の高い教育を受けられる環境を急ぎ整える必要があるといえます。

日本ではSDGs推進本部を政府に設置

 SDGsの実現に向け、世界の国々が既に取り組みを始めました。日本では安倍晋三首相を本部長とするSDGs推進本部が政府に設置され、国を挙げて推奨しています。その結果、学校や企業、地方自治体などが具体的な取り組みに入り、優秀事例を表彰する制度も設けられています。

・学校や自治体で取り組みを推進

 国内の取り組みは子ども向けのイベントやワークショップが多いのが特徴ですが、東京都江東区の八名川小学校はSDGs実践計画表を作成し、全ての教科を横断したSDGs教育に力を入れています。

 北海道下川町は地方創生にSDGsの考え方を取り入れ、森林資源を熱エネルギーとして利用しています。こうした取り組みが評判を呼び、人口約3,000人の山村に全国から移住者が集まってきています。

・環境教育でスウェーデンが環境先進国に

 2016~18年の3年間でSDGs達成度世界ランキング1位に選ばれたのが北欧のスウェーデンです。

 早くから環境保護を視野に入れた教育が進められ、エコシステムや良い消費者とは何かなどについて義務教育で学んでいます。企業もリサイクル素材を優先して使用するなど社会を挙げて、環境に優しい暮らしを実践しています。環境教育の効果が現在の環境先進国の地位を築いたといえるでしょう。

教育環境の整備にまず力を

 SDGsは国連で採択された開発目標ですが、実現には世界各国の努力が欠かせません。なかでも大切なのは質の高い教育です。

 教育によって2030年の世界を担う子どもたちに理解を深めてもらい、行動につなげてもらわなければなりません。教育環境の整備に力を入れることがSDGsの目標達成に近づく一歩になりそうです。

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