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フィールドワーク授業入門

14面記事

書評

水戸内原の問いかけ
綿引 弘文 著
「人に学ぶ」授業で学習者を魅了

 本書の「はじめに」の冒頭で、著者は「フィールドワーク授業。それは教材をフィールドに求める授業だ」と定義する。さらに「あとがき」の中で、「フィールドワーク授業の要諦は<人に学ぶ>だ」と言い切る。
 内原町のイチゴ作り(小3・社会科)、内原消防署取材ノート(小4・社会科)などの小学校中学年の実践から、宿泊学習の可能性に挑む<アイヌ民族の文化に学ぶ・北海道の旅>(中1・中2)、「俳句の授業」(中3・国語科)などの中学校の実践まで、まさに「人に学ぶ」授業が満載のリポートになっている。
 特に圧巻な実践は、アイヌを学ぶ北海道の5泊6日の宿泊体験学習の報告である。著者はこの宿泊体験学習で、著名なアイヌ文化研究者の萱野茂氏まで、引き込むことに成功する。萱野氏の存在を知った著者は、「<アイヌ民族の文化に学ぶ・「船中泊」の旅>の構想が、私の中に渦を巻くようにして浮かび上がってきた」と書く。
 この「渦を巻く」という感覚こそ、実はフィールドワークの授業のみならず、授業実践の要諦の一つである。この感覚が持てない教師は、自分の授業実践を深めることができないと断言できる。授業が平板になり、学習者を魅了することができないからだ。本書は、授業実践の本来の価値を伝える良書である。
(2160円 一莖書房)
(庭野 三省・新潟県十日町市教育委員会教育委員)

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