子どもたちの文章理解が大ピンチ。どうすれば読解力を高められるのか
トレンド子どもたちの文章読解力が大きく低下しています。経済協力開発機構(以下OECD)が2015年に72の国と地域で実施した15歳対象の学習到達度調査で、日本の読解力ランキングが2012年の4位から8位に順位を落としました。東京都総合教育会議では数学の知識はあるのに、文章が理解できずに問題を解けない子どもたちの実態が報告されています。読解力低下の原因がどこにあり、これを高めるにはどうすればよいのでしょうか。
時代とともに変化する読解力の定義
読解力は一般に文章の内容と書き手の意図を理解する力と考えられています。国語では物語の主人公の心理や人物の関係性を追う問題がよく出されてきました。
ところが、OECDの学習到達度調査や新しい学習指導要領で求められるのは、グラフや表を含めたテキストを総合的に読み解きながら、自分の意見を持って活用する力です。OECDの学習到達度調査は読解力とは書かれたテキストを理解し、利用、熟考する能力と定義しました。従来の国語教育で用いられてきた読解力とは少し意味が異なっています。
今後は読解力を養うことにより、文章を読んで内容を理解するだけでなく、状況を分析して適切な判断をする力を身につける必要があります。
背景に見えるスマートフォンの普及
2018年の東京都総合教育会議では、国立情報学研究所の新井紀子教授が子どもたちの読解力低下について、下記調査事例を挙げて問題提起しました。
・「教科書が読めないので予習、復習ができない」
・「高校生でも3分の1は主語と述語の関連性を理解できていない」
新井教授は学力格差が広がり、中学2年生時点の読解力の差でほぼ進学先が予測できるようになったと見ています。
一方、OECDの学習到達度調査では複数の課題文やコンピューター画面から情報を取り出し、頭のなかで整理できずに誤答することが多く見られました。国立教育政策研究所はこの点を例に挙げ、情報の読解、整理に問題があるのではないかと考えています。
現代はスマートフォンやパソコン、タブレットなどICT機器が普及した時代です。インターネットを通じてSNSで短い文章のやり取りをする機会が増える一方、本や新聞など論理的で一定量の文章を読む機会は減ってしまいました。国立教育政策研究所では、この影響にも注目しています。
読解力を高めるのに役立つ3つの力とは
読解力で読み取るものは文章だけでなく、画像や映像、会話、表情、雰囲気も含まれます。読解力がなければこれらを十分に読み取れず、コミュニケーションに支障が出ます。読解力は人が生きていくうえでどうしても必要な力だといえるでしょう。
子どもたちの読解力を高める方法として、一般に考えられているのが、「語彙力」、「要約力」、「思考力」の3つです。国語の力はよくセンスだと言われていますが、それは間違っています。
本来の読解力は技術であり、身につけるものです。本を読み、それを話したり書いたりして人に伝えることが、3つの力を高める道だと考えられています。
知らない言葉をすぐに調べる習慣を
語彙力とは文字や言葉を認知する力のことで、読解力を根底で支える能力になります。文章は知らない言葉が1つや2つあっても前後の文脈から想像できますが、増えすぎてしまうと途端に理解できなくなります。
人間の思考は言葉を用いるので、自分の語彙の範囲を超えられません。語彙力を高めるには知らない言葉と出会ったら調べることを習慣づける必要があります。
主語と述語を拾い出し、要約でトレーニング
教科書、新聞、本などは詳しく説明するため、長い文章になっていますが、書きたいことはいくつかに絞られています。
文章は複数の段落で、段落はいくつかの文から構成されています。各文から主語と述語を正しく読み取ることで、書き手の書きたいことにたどり着き、読解力を高めることにつながります。そのために効果的なトレーニングが要約です。最初は短い文章から主語と述語を抜き出す練習を始めるとよいでしょう。
文章を読んで考えることも重要
本を読むとき、誰もが自分の経験や知識と結びつけ、イメージを膨らませているはずです。思考力を働かせてより深く文章を読み取っているので、これも読解力を高めるのに大いに役立ちます。
新聞やネットニュースの記事を読み、「自分がどう感じたか」、「自分ならどうするか」を考えてみましょう。文章を読んで考える習慣がつけば、読解力は伸びていきます。
デジタル教材やアプリの活用も効果的
読解力を伸ばすためには本や新聞を読むことが効果的ですが、最近はそれら以外にも国語力向上を目指したデジタル教材やアプリが多数、発売、無料配信されています。
小学生低学年から中学生までそれぞれの段階に応じたものがあり、自分に合った教材やアプリを探せます。
読解力向上が新時代の力養成に
読解力を高めるには本や新聞を読む習慣をつけるとともに、日頃から読解力向上につながるトレーニングをすることが大切です。
文章を読んで満足するだけではなく、何を伝えたいのかを読み取ることで、学力向上を実現させるとともに、新しい時代に求められる力を養うことにつながります。