魅力ある大学づくりに欠かせない「学生寮」の整備
10面記事保護者も安心な食事サービス付きの寮食堂
時代にふさわしい環境づくりを目指して
再び脚光を浴びる学生寮
近年、グローバル化時代に対応した人材の育成など、社会が大学に求めるハードルが上がる中、自主性や協調性を育む環境に適した「学生寮」を人材育成の仕組みとして活用する動きが始まっている。同時に、時代のニーズに合わせた「学生寮」を整備することで、少子化対策を図る大学も増えている。ここでは、そんな再び脚光を浴びる「学生寮」の魅力について紹介する。学校施設の長寿命化&高機能化を促進
「独立行政法人日本学生支援機構」(JASSO)の2017年度調査によれば、学生寮を設置している大学は57・8%で、前年度から4ポイント増加している。また、この間、学生生活に関する各施設を新設置・増設した割合でも、学生寮が多くなっている。
このように学生寮が住環境として再び注目されている背景には、少子化が進んで大学が学生を確保することが難しくなる中で、全国から優秀な学生を呼び寄せるためには学生寮を整備することが急務になっていることに加えて、政府が掲げる「留学生30万人計画」によって、外国人留学生の受け入れが増加していることが挙げられる。
また、人とのつながりが希薄になりがちな現代の若者は、社会性に乏しいことが指摘されている。その中で学生寮には、共同生活によって規律やモラル、コミュニケーション力が培われるほか、時には仲間と衝突したり、議論を重ねたりすることで、社会に出てから必要となる力が身につくといった魅力がある。
さらに、グローバル人材の育成が重要課題になる大学にあっては、日本人学生が留学生と一緒に生活することで国際感覚や異文化理解を深める利点もある。すなわち、企業に人材を送り出す大学にとっては、学生寮の整備に力を入れることが、教育上、運営上にも有益と受け止められている。
現代にマッチした寮生活を提案
もともと学生寮の長所は、賃貸物件の相場よりも住居費が安いことにある。また、大学のキャンパスに近いため通学費も少なくて済み、食堂を備えていたり、生活必需品もある程度揃っていたりと、新生活を始めるための初期費用を安く抑えられるメリットがあった。しかし、同じ学生同士で共同生活するため、人との交流やつながりが生まれやすい反面、プライバシーがなく、先輩との上下関係も厳しいといったイメージがあったのも事実だ。
こうした中で近年整備が進められている学生寮の特長は、共通の趣味を持つ学生が集まる「コンセプト型」や、マンション同等の個室に加えて食堂があるもの、オートロックや監視カメラなど最新のセキュリティとWi―Fiなどのインフラを備えたタイプ、留学生も一緒に住む「国際交流型」など、現代の学生の生活様式にマッチしたさまざまなタイプの学生寮が登場していることにある。
企業のノウハウを生かした整備を
そして、これらの新しい機能を備えた多くの学生寮を提案しているのが、集合住宅の施工や運営に実績を持つ企業の存在だ。たとえばPC工法のパイオニアとして数多くの集合住宅を建設してきた大成ユーレックでは、高い基本性能と低価格を実現する工法を開発するとともに、各大学が実施する事業化方式に対応するネットワークによって、学生寮運営企業とのマッチングから設計・施工までを行っている。
学生寮の整備には敷地や建設資金の確保、施設規模や運営方法など検討すべき事項が複雑に絡み合ってくるため、大学にとっても、こうしたサポートを受けられる意義は大きい。しかも、学生が住みたいと思えるような寮を設計するためには、学生寮はもちろん、社宅や独身寮を多く手がけてきた同社の豊富なノウハウが強い味方になるはずだ。
このように、新たな価値観で創造する「学生寮」の整備は、少子化やグローバル化への対応が迫られる大学の中で、学生募集の決め手に直結する手段として、あるいは社会の要請に応える人材を育成する場として期待されている。そして何より重要なのは、学生がこれからの人生に役立つ貴重な経験を積むことができる場所として、学生寮を教育資源として活用することにある。その意味でも、大学は寮生活で育成できる資質を見極め、しっかりとしたコンセプトを持って運営にあたることが必要になるといえる。
留学生にニーズのある自炊用キッチン