カリキュラム・マネジメントって何? 実行すれば学校がどう変わる
トレンドみなさんは「カリキュラム・マネジメント」という言葉を知っていますか。幼稚園から高校、特別支援学校まで全ての新しい学習指導要領で総則に記載され、文部科学省が新時代の教育を支える最重要ポイントの一つと位置付けたカリキュラム・マネジメントとは一体、どのようなものなのでしょうか。その仕組みと具体的な事例を紹介します。
カリキュラム・マネジメントとは?社会の課題に対応できる能力養成と教育課程を計画的に編成
カリキュラム・マネジメントとは、各学校が教育課程(カリキュラム)の編成、実施、評価、改善を計画的かつ組織的に進め、教育の質を高めることを意味します。
新しい学習指導要領に盛り込まれた言語、情報活用、問題発見とその解決の能力を高め、現代社会が抱えるさまざまな問題に対応できる資質を育てるためには、教科を横断した学習が欠かせません。そこで、文部科学省は教育の質を高め、学習効果の最大化を図れるカリキュラム・マネジメントの確立が必要であると考えています。
これまでも教育課程の編成は各学校で行われてきました。しかし、時代が大きく変わるなか、学年の壁を越えた学校全体でのカリキュラムマネジメントを確立する必要性は高まっています。
カリキュラム・マネジメントを確立する3つのポイントとは
中央教育審議会で新しい学習指導要領が審議された際、文部科学省はカリキュラム・マネジメントの確立について3つのポイントを示しました。
1つ目は教科横断的な視点で学校の教育目標達成に必要な教育課程を組織的に配列すること。
2つ目は子どもたちの実態や地域の現状に関する調査結果とデータに基づいて教育課程を編成、実施した後に評価と改善を行うPDCAサイクルの確立。
3つ目は地域と連携し、教育に必要な人材、資源を外部に求めることです。
これまでは教育課程の内容を見直すことばかりに視点が置かれてきましたが、学習指導要領が新しくなり教育内容が大きく変わると同時に、3つのポイントを念頭に置いて取り組む必要が出てきました。
教科を横断して教育課程を編成
新しい学習指導要領が目指すのは、授業の質的転換です。児童、生徒の主体性を引き出しながら、深い学びの実現を目指しており、知能や技能にとどまらず、思考力や判断力、表現力の育成に狙いを置いています。
これらの能力育成は1つの教科だけで行えるものではありません。教育課程を構成するすべての教科がそれぞれの役割を果たすと同時に、国語で養った言語能力を他の教科でも育成するような教科をまたいだ教育課程の編成が求められます。
授業は教科書の順番通りに行わなければならない決まりはありません。子どもたちの実態と教育目標に応じた授業計画を立てるべきだとされています。
PDCAサイクルで絶え間なく教育の質向上を
PDCAは民間企業でよく使われる言葉です。Pは計画(Plan)、Dは実施(Do)、Cは評価(Check)、Aは改善(Action)を指します。このサイクルを回して絶え間なく学校教育の質を高めていくことが文部科学省の狙いです。
サイクルを確立するためには、子どもたちにどのような資質を身につけさせたいかを明確にした学校の全体構想をまとめ、それに基づいて教育課程の内容を詰めていかなければなりません。
従来、学校の全体構想は校長ら管理職だけで決議していましたが、現場で子どもたちと接する教員も加えて学校全体で検討を進めることで、実際の指導でさらに効果を上げられると期待されています。
地域と連携した授業の編成も有効
子どもたちが育む資質や能力は、社会で活躍するために必要不可欠です。社会や地域とのつながりを意識させることも重要で、地域と連携した授業を組むことで、より大きな効果を期待できます。放課後や土曜日を活用し、社会教育と連携することも有効です。
学校で行われている教育内容を地域の人たちに知ってもらうとともに、地域の人たちから情報や課題を教えてもらい、より深い学びを実践できます。
上越市大手町小学校の先進事例を紹介
カリキュラム・マネジメントを実践し、既に成果を上げている学校があります。その代表が文部科学省から教育課程研究開発学校の指定を受けている新潟県上越市の大手町小学校です。
学校活動で養う能力を探求力、情報活用力、コミュニケーション力、創造性、自律性、共生的な態度の6領域に整理し、生活・総合を中核教科に据えたうえで、算数と理科を「数理」、国語と外国語活動を「ことば」といった形で他教科を再編しました。
さらに、多くの体験型学習を授業に取り入れており、子どもたちが主体的に授業を取り組むようになりました。
個性豊かな学習スタイルで深い学びを実現
カリキュラム・マネジメントは、子どもたちや地域の実情に合わせた教育課程を編成するもので、実現すれば個性豊かな学習スタイルが次々に登場してくるでしょう。
そのなかでも重要となるのが、どうやって子どもたちに主体性を持たせ、深い学びを実現するかです。学校全体で教育課程の編成を進めるとともに、教員一人ひとりがカリキュラム・マネジメントへの理解を深めなければなりません。