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大学英語教育の質的転換 「学ぶ」場から「使う」場へ

18面記事

書評

佐藤 響子・Carl=McGary・加藤 千博 編
学生を変容させた実践の記録

 大学英語教育の実態を探ると、それぞれに取り組みの工夫が見られる。しかし、その成果は必ずしも期待されるものとはなっていない。以前、教採試験の実技にALTを導入したとき評価結果が変わったことを思い出す。「専門性」と「教師としての人間性」を併せ持つことが必須である。しかし、私はあえて非認知能力を重視して採用した。それは学習に行き詰まる眼前の生徒を見過ごせないという心情が専門性を高めるとの信念からだった。
 本書は、大学における英語教育の現状を何とかせねばならないという「使命感」と「智恵」と「障壁を乗り越える信念」から成された実践記録である。それを形にして、世に問う先駆の取り組みは、必ずや全国へ大きな波紋を及ぼす。海外で長く生活し日本でビジネス英語を教えておられた大先輩から「グローバル人材を育てることは分かるが、その活用の場を考えているの」と問われた。言葉に詰まってしまった。まさに大学英語教育の質的転換が迫られている。それは学ぶ場から使う場へと進化させねばならないのである。そこにコミットして学生を見事に変容させている実践が随所に読み取れる。教授陣の自己満足でないことは、巻末の「学生・卒業生の声」に目を通されると納得できる。構成は5部20章となっているが、私が興味深かったのは何と言っても第7章の反転授業の項である。
(2484円 春風社)
(大久保 俊輝・亜細亜大学特任教授)

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