日本最大の教育専門全国紙・日本教育新聞がお届けする教育ニュースサイトです。

人間性の涵養 新学習指導要領の究極的な目標は

16面記事

書評

教育フォーラム63
梶田 叡一 責任編集
日本人間教育学会 編
現場の取り組みへ具体的提言

 新学習指導要領は、最終的に実現すべき教育成果として、「知識・技能の習得」「思考力・判断力・表現力の育成」「学びに向かう力・人間性等の涵養」の三つを挙げている。これは、基本的には、平成19年7月に改定された学校教育法に規定された「学力の3要素」に対応するものだが、とりわけ三つ目の箇所に「人間性の涵養」が加わっている点に大いに注目しなくてはならない。
 編者の梶田氏は「この『人間性の涵養』こそが、『主体的・対話的で深い学び』を通じて実現していくべき、最終的な教育成果なのである。学習指導要領で、ここまで明確に『人間としての基本的在り方』そのものの育成を打ち出したのは画期的であり、まさに特筆大書すべき点であろう」と指摘している。
 しかしながら、こうした大目標を、各教科・領域の教育活動を通じて、さらには日々の学校生活と教師との師弟関係、級友との関係等を通じて、どのようにして実現していくかは大きな課題であり、どこにも具体的な方法論が示されているわけでない。一人一人の教師が、そして各学校の教師集団が、精力的に工夫し実践し、その効果を長い目で見詰め続けていかなければならない。
 本書は、教育現場における「人間性の涵養」の実践的な取り組みについて、具体的な形で提言を試みた初めての書で、根本的な教育課題にアプローチした意義は大きい。
(2592円 金子書房)
(規)

書評

連載