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室内プールの吊り天井を「膜天井」に改修

10面記事

施設特集

軽量で景観にも優れた膜天井(中央区立中央小学校)

導入事例
東京都中央区

 学校施設の耐震化が進む一方で、吊り天井を有する屋内運動場等の落下防止対策の遅れが指摘されている。その中で全国の学校施設における天井改修に採用されているのが、シートによる軽量・柔軟な素材で安全性を高める「膜天井システム」(リフォジュール)だ。ここでは、中央小学校の室内プールの天井改修に同システムを採用した中央区の事例を紹介する。

遅れている天井落下防止対策
 東日本大震災では学校の体育館や屋内プールといった屋内運動場の吊り天井が落下した事故が多数発生したことを受け、文部科学省は2013年8月に「学校施設における天井等落下防止対策のための手引」を取りまとめ、全国の学校設置者に対して天井材や照明などの非構造部材の落下防止対策を推進してきた。
 しかし、昨年度に文部科学省が緊急点検した調査結果によれば、未だ安全性に課題がある公立学校が46%もあることが分かっている。このため、政府が閣議決定した「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」では、2020年度までに対象となる5千4百箇所について、落下防止措置を講じる財政的な支援を打ち出しているところだ。

湿気の多い室内プールに適した天井システム
 こうしたなか、中央区では平成26年度に特定天井の法改正が施行されて以降、対象となる体育館など屋内運動場の天井改修を順次進めている。区の教育施設は都心という立地条件に配慮し、屋内運動場にもエアコンが整備されているため、空調効率を上げる吊り天井を設けている施設が多いという事情があった。
 その中で、今年3月末に工事を完了した中央小学校の室内プールの天井改修には、膜天井システムを採用した。「吊り天井の落下防止対策としては超軽量なグラスウールボードを使う方法もありますが、湿度が高い室内プールの天井には向かないと判断し、湿気に強い特長を持つ膜天井を選択しました。また、以前に別の小学校の室内プールでも膜天井を採用していた経緯もあります」と理由を説明する。
室内プールの天井は常に湿気にさらされ、塩素などによって腐食の影響も受けやすいことから、天井落下のリスクが高くなる。その点、膜天井は湿気を吸わないシートのため、このような多湿環境の天井システムに適しているのだ。

安全を第一に考えた軽量素材
 その上で、「何よりも重視したのが、軽量な素材であることです。特にプールは素肌に近い環境で利用するため、万が一落下しても事故につながらない設計が重要と考えました」と指摘する。軽量な「膜」と軽量フレームを素材としている膜天井システムは、一般的な石膏ボードの天井に比べると重さが約30分の1から約10分の1と軽量なのが大きな特長。しかも、柔らかいシートの特性によって、地震の揺れにも強い耐震性を備えている。
 工事は今年1月から3月にかけて実施。同校の室内プールは一般開放をしていることもあり、最も利用率の低い時期に設定したという。「プール場は天井も高く、養生もそれに応じて組む必要もあるため、施工には余裕をもたせて進めました」と話すように、短期間で施工できるのも膜天井システムの魅力の1つ。体育館などの工事では学校活動への影響を少なくするため、夏休み期間に終えるところも多い。
 さらに、肝心の仕上がりについても「以前の天井も白さが強調されていましたが、それと比べても見分けがつかないほど、明るくすっきりしたデザインに仕上がりました」と満足する。空調の吹き出し口など、もともと吊り天井を外した状態を想定していないこともあり、意匠性や空調効率を考えても膜天井を設置する効果は大きいようだ。
 区の天井落下防止対策は同校が最後となる。

地域にも開放されるプールとして
 2012年9月に地域開放型の学習拠点をテーマに竣工した中央小学校は、自然の採光や壁面緑化を取り入れるほか、開閉ドーム屋根付き屋上校庭など公立小学校としては屈指の設備を備えていることから、地域のシンボルとして親しまれている。その意味でも、室内プールの安全性を高めることは、児童はもちろん地域の人にとってもうれしい知らせになる。利活用が本格化するこれからの季節が今から楽しみだ。

4月にオープンした膜天井システムの室内プール(中央区立中央小学校)
4月にオープンした膜天井システムの室内プール(中央区立中央小学校)

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