プログラミング教育への期待と備え とにかく実践してみることが大切
14面記事小学校のプログラミング教育必修化まであと1年を切り、学校現場では授業で使う教材を本格的に検討する段階に入っている。そこで、江崎グリコが提供しているプログラミング教材「GLICODE」(以下グリコード)の授業用コースの開発に携わった東京学芸大学の高橋純准教授に、今後のプログラミング教育への期待と備えについて聞いた。
高橋 純 東京学芸大学准教授
より活用しやすくなった「グリコード」
「グリコード」はポッキーをルールに従って並べ、キャラクターをゴールに導くことで、誰でも楽しみながらプログラミングの基礎的な考えを学ぶことができる教材です。
このほど改修した「授業用コース」では、「シーケンス(順番に実行)」と「ループ(繰り返し)」という基本概念の理解と論理的思考力の育成に重点を置き、難易度の異なる計12コースを用意。指導案や実物のポッキーの代わりとなる教具キットも付属しており、学校現場でより活用しやすくなったと思います。
すでに学校での活用も始まっており、これまでに活用いただいた学校ではプログラミングの楽しさを感じることができたという声が上がってきています。こうした点からも、ぜひ、プログラミングの初期指導に導入していただけたらと考えています。
こうしたなか、来年度に迫った必修化に向けての課題は、現在までにプログラミング教育で成功している事例が、ICT環境が整っていて、これまでの実践の積み重ねがある学校に限られていることです。むしろ、全国的に見ればプログラミングの授業になかなかチャレンジできない学校の方が多いくらいではないでしょうか。
そうした状況であるからこそ、とにかく実践してみることを強く勧めたいです。自分たちの学校にはどこが足りないのかを把握する意味でも、とにかくやってみることが大切です。
最初の一歩の選択肢として「グリコード」を活用
その上で、「どうやって教えたらいいのか」「教材はどうするのか」といった先生方に応える観点から、手軽にプログラミング教育を試せる「グリコード」を1つの材料として利用してみるのも良い選択だと思います。
何より、多くの先生方がプログラミング教育を体験してみることが、来年度に向けた備えになりますし、ポッキーという誰にでも馴染みのある“お菓子”を使ってプログラミングが学べるだなんて、先生方も取り組む意欲も上がるのではないかと思います。
「総合」で活用できるカリキュラムも視野
また、このような状況を鑑み、文部科学省、総務省、経済産業省が連携して取り組む「未来の学びコンソーシアム」では、今年9月を「未来の学び プログラミング教育推進月間」と設定。全国の小学校に対して、月間にプログラミングの授業に取り組んでみるよう呼びかけています。
なかでも注目は、民間企業と連携し「プログラミングが社会でどう活用されているのか」に焦点を当てた、総合的な学習の時間における指導案の配信や実践事例の創出に乗り出したことです。各学校でプログラミング教育に取り組む幅を広げる意味でも、こうした動きにも目を配る必要があるでしょう。
日本が遅れている問題解決力の育成を
一方、今後プログラミング教育を指導していくにあたっては、指導者も含めて体系的・系統的に育てていく必要があると思っています。というのも、OECDの「国際成人力調査」によれば、我が国は読解力も数的思考力も1位と素晴らしいですが、ITを使った問題解決力になると10位と大きく後退してしまう。すなわち、紙と鉛筆であれば1位ですが、コンピュータの活用能力を含むと順位が落ちるといった状況が生まれてしまっています。
私が指導する将来教員を目指す学生も、プログラミングの話には少し抵抗感を示す傾向があります。私は文系だから、プログラミングは苦手だと。でも、最近流行のドローンを活用して、ドローンを正方形に飛ばすという課題を与えたら、とても真剣に取り組んでいました。実際に動かしながら試せることが、意欲を引き出したのだと思います。
このように、まずは体験することが大事で、そのきっかけが興味・関心になって学びにつながっていく。つまり、学校現場も同様なはずで、それがとにかくやってみようという根拠になっています。
●グリコードの取り組み事例
“ポッキー”並べてプログラミング体験
https://www.kyoiku-press.com/post-200809/
小学校で使いやすいプログラミング教材
https://www.kyoiku-press.com/post-201104/