“ポッキー”を並べてプログラミング体験
11面記事ポッキーを並べ直して解法を考え話し合う子どもたち
学校現場との協働で生まれた教材「GLICODE(R)」
授業用コース・キットの提供を開始
2020年度に全面実施となる学習指導要領では、小学校でプログラミング教育が必修化される。江崎グリコでは学校現場の取り組みを支援するため、一般向けに提供しているプログラミング教材「GLICODE」(以下、「グリコード」)を、大学有識者や学校の先生の意見を踏まえて改修し、授業用のコンテンツを追加した。「グリコード」を活用した実践の様子から、今後のプログラミング教育の授業像を考える。(制作協力=江崎グリコ株式会社)
シンプル操作で導入教材に有効
年間通じた指導で論理的思考力を育成
グループでプログラミングを楽しむ
千葉県・柏市立大津ケ丘第一小学校
市のサポートで全小学校で実践
ICT活用や情報教育の先進的な取り組みで知られる千葉県柏市では、「プログラミング的思考(論理的思考)は、時代を超えて普遍的に求められる資質・能力」と位置づけ、平成29年度から市内全小学校でプログラミング教育を実施している。
4年生の総合的な学習(2時間)でプログラミングの基礎を学び、身につけたスキルをその後の教科学習や作品づくりなどで活用し、定着を目指す。市は各校に情報教育専門支援員を派遣し、教材準備や機器操作面での教員の負担軽減も図っている。
柏市立大津ケ丘第一小学校でも、市の基本方針を踏まえ、自分の考えをまとめたり発信したりするツールとしてICTを積極的に活用している。今年度の4年生は、社会科の地域調べや総合的な学習の防災マップづくりなどで、市のプログラミング教材を計20時間近く利用してきた。
今回の授業は、これまで学んできたスキルも活用しながら、「グリコード」を通じてプログラミングの楽しさを味わう場として設定した(総合的な学習扱い)。
プログラミング教材「グリコード」は、所定のルールに沿って並べたポッキーをカメラで読み取ってコード化し、キャラクター“ハグハグ”を女の子のもとまで導くゲーム感覚の内容で、小学生でも楽しみながらプログラミングの基礎を学ぶことができる。
このほど改修した「授業用コース」では、「シーケンス(順番に実行)」と「ループ(繰り返し)」という基本概念の理解と論理的思考力の育成に重点を置き、難易度の異なる計12コースを用意。45分授業に対応した指導案や、実物のポッキーの代わりに使える教具キットなども提供し、学校現場での使いやすさに配慮している。
班で試行錯誤し達成感を共有
井上昇教諭が指導したこの日の授業では、2~3人のグループで1台のタブレットを共有した。子どもたちは「グリコード」の基本操作を確認した後、グループで話し合いながらポッキーの並べ方を工夫し、「シーケンス」の6コースをクリアした。
続いて教諭は、一定のプログラムを繰り返し実行することを「グリコード」では「ループ」と呼ぶことを紹介し、ポッキーの並べ方を例示。「ループ」のコースは、6本のポッキーを使って解くという条件を設定して取り組ませた。
後半は2つのループを組み合わせるコースなどもあり、難易度が上がる。並べ方を試行錯誤する子どもたちに、教諭は「進みたい方向を言葉にしたら、“ずっと”が見つからない?」など、ループを意識させるような声かけで支援していた。一方で、機器の操作やプログラミングの得意な子どもが、周囲のグループにアドバイスをする場面も見られた。
コース2-6は、縦横5マスを自由に進むことができる。授業内のわずかな時間で、6本のポッキーで6パターンのプログラムがつくれることを見つけたグループもあり、「答えがひとつではないのが面白い」といった声が上がっていた。また、「ハグハグの動きがかわいい」「家でもやってみたい」など、教材そのものに興味を持った子どもも多く見られた。
井上教諭は、「手順を順序立てて考えることや、一度の失敗で投げ出さず試行錯誤する姿勢が出ていた」と子どもの活動を評価し、年間を通じた指導の成果を実感した様子だった。
また「グリコード」の魅力については、「ポッキーを使うというユニークさが子どもの興味を引くうえに、並べて写真を撮るだけのシンプルな操作で学べるのがいい。3年生でもプログラミング教育の導入として利用できそう」と話していた。
同校の古内明校長は、小学校でのプログラミング教育について、「結果から逆算して手順を考える論理的思考のできる人が社会の役に立つ時代」と、社会的な意義を強調する。同校でも今後実践を継続しながら、「ICTを活用する場面はもちろん、そうでない“アンプラグド”な学習の場でも、論理的思考を常に意識させるような授業づくりを目指していきたい」としている。
子どもの興味高める心強い教材
4年生算数科でプログラミングを学ぶ
既習事項の活用場面として有効
東京都・墨田区立業平小学校
「グリコード」を数学的活動に導入
墨田区立業平小学校では、4年生算数科「直方体と立方体」の単元に関連した「ものの位置に関わる数学的活動」として、「グリコード」を使った学習を行った。
今回は、算数科が求める「平面上の位置関係について、任意のもので表すことできる」を授業目標に、プログラミングの基礎的な考え方にも触れる内容とした。
授業の冒頭、平田崇晃教諭が「プログラミングってどんなものか知っている?」と問いかけると、子どもからは「コンピュータに台本をつくって機械を動かす」といった意見が出た。教諭は、身の回りの機器の多くはプログラムの指示で動いていると説明した。そして、本時のめあて「グリコードを使って、位置関係を調べよう」を提示した。
次に授業用コース「シーケンスを学ぶ」のなかから、凹字形のコースを例示。ハグハグをどう動かせばよいか子どもたちに発言させながら、「下右右上」と板書し、文字に対応するように黒板にポッキー(自作教具)を並べて基本的な手順を理解させた。
例示コースを1人1台タブレットで解いて動作を確認した後、子どもたちは「シーケンス」の各コースを順番に解いた。本時のポイントは縦横4マスを自由に進めるコース6で、一度ゴールした後も繰り返し挑戦して「3通りの行き方を見つけた」と話す子どももいた。
教員に求められる学習意義の理解
後半は、このコースの解き方を子どもに発表させ、気づいたことを全員で共有した。教諭は、階段状と正方形の辺に沿って進む計3パターンの移動経路を黒板で示し、「どの解き方も右に3歩、下に3歩の6つの指令で成り立っている」ことを確認。その上で、「ハグハグから見て女の子は、右3、下3の場所にいる」と位置関係を押さえ、「ポッキーの数と向きで目的地を表すことができる」ことを理解させた。
授業後の子どもたちは、「ポッキーの向きを変えて、どうしたらうまく動くか考えるのが楽しかった」、「同じコースで何通りも行き方があった」、「他のコースもやってみたい」といった感想を話していた。
本単元では、2次元での位置の表し方を方眼状の略地図などを用いて学ぶ。今回は単元進度の都合で「グリコード」を使う授業が先になったが、「2次元位置の表し方の学習を終えた後なら、既習事項を活用する場面として、同じ平面移動を扱う『グリコード』をより自然な流れで導入できる」と平田教諭は言う。
今回初めて利用した「グリコード」については、「子どもの関心を引きつけられることが心強い」と評価。教材活用のポイントとしては、言葉だけでなく黒板での掲示なども使って「何をどうすればコースがクリアできるのかをしっかり理解させること」と、本時後半のように「各自の気づきを共有する場面をつくること」を挙げた。
次の学習指導要領ではプログラミング教育の特定の時間は設定されていないが、4年生算数「直方体と立方体」、同理科「電気の働き」は、教科との関連で取り組みやすい場面として有力視されている。
平田教諭は、「校内研修などを通じて、小学校でプログラミングを扱う意義を教員が理解しておくことが重要」と指摘し、「論理的思考力を育てるという目的がわかれば、先生方が持つ指導スキルと魅力的な教材を生かして、各教科で良い授業ができると思う」と話す。
「グリコード」のコースを板書で示し、位置関係を指導する平田教諭。「既習事項を活用する場面でも『グリコード』は導入できる」と話す
子どものスキル差への配慮が重要
1人1台タブレットで初めてのプログラミング体験
総合的な学習で試行授業
長野県・箕輪町立中部小学校
長野県箕輪町立中部小学校では、4年生の総合的な学習で「グリコード」を使ったプログラミングの授業を試行した。
本時では1人1台のタブレットを使用した。家庭で使ったことのない子どもがいることに配慮し、事前に数時間、タブレットを使って写真を撮るなど簡単な操作を体験した。
村上大介教諭は授業の冒頭で、「プログラミングについて知っていることはある?」と問いかけ、「ロボットに命令をすること」「ゲームをつくること」など子どもの意見を引き出し、「今日は『グリコード』というアプリを使って、簡単なプログラミングを体験してみよう」と授業のめあてを示した。
次に、教諭が実際に「グリコード」を使って操作手順を演示した。「ポッキーを並べてハグハグに命令を出すと、泣いている女の子を助けに行く」との説明に、画面を見ていた子どもたちも「面白そう」と興味をひかれた様子だった。
子どもたちはポッキーを並べて撮影するところまで各自で進め、全員で一斉にプログラムを実行して、コースがクリアできることを確認。続いて、教諭の支援や友だちのアドバイスを受けながら、「シーケンス」の各コースを各自で自由に進めていった。
この日の授業でプログラミングを初めて体験した子どもたちからは、「自分のつくった命令がすぐに実行されて楽しかった」「命令すると動いてくれるのはすごく便利だと思った」「コンピュータはきちんと言う通りにしてくれることがわかった」といった感想が出ていた。
4年生3クラスで同様の授業を試行した村上教諭は、「1人1台のタブレットを使う際は、家庭で使っている子とほとんど触っていない子のギャップをどう埋めていくかが課題になりそう」と感じたという。
「グリコード」の活用については、「立って撮影し、座ってプログラムを実行するといったルールを決めておくと、全員の進度や個別支援の必要な子どもを把握しやすいので、授業進行がスムーズになる」と振り返っていた。
立って撮影するといったルールを決めておくと、授業もスムーズだ
「グリコード」をこう使いたい
プログラミング教育への備えに
高橋 純 東京学芸大学教育学講座准教授
小学校でのプログラミング教育は次の学習指導要領から新しく盛り込まれる内容なので、まずは学校現場で多様な実践を積むことが重要。「グリコード」のようなプログラミングの基礎を手軽に学べるツールを活用して、論理的思考力を育てるプログラミング教育を体験することは、2020年度からの全面実施への備えとしても有効だ。教科との関連では、4年生算数の正多角形の学習のほか、理科の電気の単元でも扱えるのではないか。
わかりやすさ生かして低中学年でも
西田 光昭 柏市教育委員会教育専門アドバイザー
「グリコード」は、子どもたちにとって身近なお菓子を使って楽しみながら学べる点が魅力的だ。具体物を並べて考えるという活動を通じて、「シーケンス」や「ループ」といったプログラミングの基本的な概念に触れ、論理的思考力を高めることができる。操作性もわかりやすいので、柏市のように独自の教材を使ってプログラミング教育を先行実施している地域でも、指導の導入や準備段階として低中学年から活用できる可能性がある。
GLICODEとは?
「GLICODE(グリコード)」は、江崎グリコが開発した子ども向けのプログラミング教材。ポッキーをルールに従って並べてキャラクターに指示を出し、ゴールまで導くゲーム感覚の内容で、プログラミングの基礎的な考え方を学びながら、論理的思考力や課題解決力を身につけることができる。
小学校でのプログラミング教育必修化を見据え、2016年度の総務省「若年層に対するプログラミング教育の普及推進事業」のもと複数の小学校で教育課程内での実証研究を行ってきた。教材の使い方や指導案をまとめた教師用キットも提供しており、国内の小学校での導入事例が増えている。またシンガポールやタイの学校でも活用されるなど、海外でも注目を集めている。
「GLICODE(R)」ができること
小学校低学年からプログラミングの考え方を身につけることで、論理的思考力や問題解決能力が育つと考えられています。
創業以来、子どもたちの健やかな成長を願ってきたグリコは、社会で求められる新しい教育の力になるため、
おいしいおかしを食べながら楽しく学べるプログラミング教材「GLICODE(グリコード)」を開発しました。
子どもの論理的思考力を育てます
ポッキーをルールに従って並べて、「SEQUENCE(順番に実行)」「LOOP(繰り返し)」「IF(場合分け)」というプログラミングの基礎的な考え方をすべて楽しく学習。
さまざまなステージをクリアすることで、課題解決の手順を論理的に導き出す思考力が身につきます。
※「じゅぎょう用コース」では「SEQUENCE」と「LOOP」が学べます。
指導者用資料が充実しています
プログラミング教育に詳しい有識者や学校の先生方にご協力いただき、授業でご使用いただける「じゅぎょう用コース」と、指導案を作成しました。
アレルギーのお子さまでも安心して扱える学習用キットも、全国の小学校を対象に無料配布しております。
※学習用キットのお申込みについては、GLICODEのWEBサイトをご覧下さい。
準備の手間なく気軽に使えます
お使いのスマートフォンやタブレットにアプリ(無料)をダウンロードし、市販のチョコレートポッキーとクッキングペーパーを準備するだけで、すぐに利用することができます。
衛生面に留意して、おかしで学ぶ「グリコード」の世界をお楽しみください。