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平等の教育社会学 現代教育の診断と処方箋

15面記事

書評

耳塚 寛明・中西 祐子・上田 智子 編著
進路選択や学力格差を論考

 「現代教育の診断と処方箋」の副題の付く本書。耳塚教授(お茶の水女子大学基幹研究院)を中心に、10人の女性研究者の執筆。教育社会学専攻の女性研究者が巣立ち、活躍していることにまず注目。これからの活躍を願いつつ、11本の論考を紹介しよう。
 本書は5部構成、第I部は「進路選択をめぐる研究」、第II部は「教育達成の階層間格差に関する研究」、続く第III部が「オルタナティブ(注・伝統や型に左右されない)な学歴についての研究」、そして第IV部が「子どもや教育にまつわる言説の研究」。第V部が「学力格差研究」である。多様で多岐にわたる論文集だ。執筆者が独立した研究者であることを考えれば、こうした編集になることは当然か。
 多様な論文集とは申せ、本書には二つの求心性があることを承知しよう。それは(1)実証性である。各章とも、調査研究に依拠して議論を展開。もう一つは(2)現代社会における“教育と不平等”問題に、共通して関心を寄せていることである。各論文を紹介する紙幅がないので読者の便を考え、第11章の「学力格差の社会学」の要点を紹介する。“学力の地域間格差から家庭的背景による格差”に移りつつあること。メリトクラシー(能力に努力を加えたもの)と、家庭学習指導の実践に注目することなどが指摘されている。
(3024円 勁草書房)
(飯田 稔・千葉経済大学短期大学部名誉教授)

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