「完全学校週5日制」下
NEWS教育界を揺るがせたトピック 平成の30年(2)
完全学校週5日制は、子どもたちの休日の生活を変えただけではない。
一方で、完全学校週5日制下での学習指導要領は、土曜日が休日となったことで学習量が精選され、「ゆとり教育」との批判を浴びることになる。
もともとの趣旨は、ゆとりある時間を使って考える力を付けるというのが狙いだった。だが、学校現場に十分に浸透していく前に、当の文科省から基礎学力の定着を重視する「学びのすすめ」が公表されて、学校現場に戸惑いが広がったのも、この頃のことである。
アピール文を打ち出したのは、遠山敦子文部科学相である。教育関係者に向かい理解を求めた時の様子を、日本教育新聞は、以下のように報じた。
学力低下の懸念受け具体策/補習・宿題など要請/文科相が方針打ち出す/「新指導要領の趣旨は変わらず」
遠山敦子文部科学相は十七日、東京都港区で開かれた全国都道府県教育委員会連合会の総会で、学習のつまずきのある子どもには放課後に補習を行い、理解の進む子どもには発展的な学習を推奨するよう各都道府県教育長に呼び掛けた。さらに、次の教科書検定から発展的な学習に関する記述を可能とすることを明らかにした。
今春から小・中学校で実施される新学習指導要領で広がる子どもの学力低下の懸念を受けた呼び掛け。文科相は「新学習指導要領の趣旨を変えるものではない。繰り返し示してきたことを整理した」ことを強調した。
呼び掛けは、「確かな学力を向上するための2002アピール―『学びのすすめ』」と題して、子どもにきめ細かな指導で基礎・基本や自ら学び、考える力を育てることや学習習慣を身に付けることを求めている。
昨年十二月に公表された、世界の十五歳を対象とする経済協力開発機構(OECD)の「生徒の学習到達度調査」の結果を踏まえた。日本の生徒は最高レベルの読解力の持つ割合がOECD平均にとどまり、宿題や自分の勉強をする時間が参加国中最低だった。
そのためアピールでは、各学校の判断で、放課後を利用した補習や朝の読書、宿題や課題を子どもに与えることを要請。教員の裁量である補習や宿題の推進を国が示すのは極めて異例だ。土曜日に補習を行うことには、文科省教育課程課は「完全学校週五日制の趣旨を十分理解しながら、各学校で判断してもらいたい」としている。
また、学力向上の成果を適切に評価するため、具体的指標を導入し、国民に分かりやすく示す▽小学校高学年から中学校向けに、算数・数学や理科などの教師用参考資料を本年度中に作る▽子どもの実態に応じて柔軟な時間割の編成▽少人数指導や習熟度別指導など個に応じた指導を大幅に取り入れる―などの方針も示した。
<掲載日・平成14(2002)年1月25日>
基礎学力と考える力の両方を、その後の教育課程では、追い求めることになるが、そのための授業時数の確保とのせめぎ合いの中で、2013(平成25)年には「土曜授業」の道筋も付けられた。
「土曜授業」で省令改正/教育課程外の活用も促す/文科省
文科省は11月29日、学校教育法施行規則(省令)を改正し、教育委員会が必要性を認める場合には、土曜日に授業を実施できると規定した。パブリックコメント制度を通して募集した意見では、教職員の負担が増すことから慎重論が根強かったが、文科省は教育委員会の判断で実施することを強調している。同時に、省令改正とは別に、教育課程外で、教員や保護者、企業などさまざまな立場の人、機関がボランティアとして指導する土曜日の教育活動を促していく方針だ。
省令改正の趣旨について文科省は、「子どもたちに、これまで以上に豊かな教育環境を提供し、成長を支えることが必要。学校、家庭、地域が連携し、役割分担しながら、取り組むことが重要」などとしている。
「土曜日の教育活動」については4類型に分けた。省令に基づく「土曜授業」は、「児童・生徒の代休日を設けずに、教育課程内の学校教育活動」と定義した。
この他、学校が主体となった教育活動ではあるが教育課程外に位置付けた「土曜の課外授業」、学校以外が主体となった「土曜学習」がある。
このような「土曜学習」については、教育委員会など公的機関が主体の活動に加え、NPO(非営利団体)など民間の活動を含めている。
改正前のこの省令は、土曜日を公立学校の休業日に位置付けた上で、「特別の必要がある場合」は例外としていた。この記述が何を意味しているか明確でないとの指摘があったことから、「当該学校を設置する地方教育委員会が必要と認める場合」に改めた。
<掲載日・2013(平成25)年12月9日>
「学校6日制」の復活につながるとの指摘もあったが、最近の教員の働き方改革など教員の加重負担論議の渦中にあって、「土曜授業」は有名無実化することも考えられる。
(編集局)